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□届けに行こうコノ想い。
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アイツが、この町から旅立っていった。
喜ばしい事だった筈なのに…。
──何故か泣きたくなった。
届けに行こうコノ想い
さして名物になる様な物がないマサラは、今日も平和で子供たちの声だけが遠くから聞こえた。
「──…」
アイツが居なくなった町は、変わることなく時を刻んでいる。
──それを、寂しく感じた。
アイツの身体が正常に機能しなくなっていたのを知ったのは、時間がかからなかった。
久しく会ったアイツが愛しくて、貪る様に抱いたあの時、握っていた手が痙攣していた。
今まで何度かあった。
行為が恥ずかしくて、怖くて震えていたアイツ。
そう言う時は、震えている所に吸い付く様なキスをした。
だから、その時も同じ様にキスをしたんだ。
ただいつもと違ったのは、久しぶりに会った為に少し熱っぽくなったキスと、いつまでも変わらずに震えているアイツの手だけだった。
その片手の震えは行為の後も継続し、アイツは隠す様に、自分の胸に抱え込む様に握りしめていた。
ある時は、お揃いのカップの片割れを落とした。
俺が誕生日にプレゼントし、綺麗な笑顔で「一生大切にする!」と言ったカップだ。