この狭い世界の片隅で。
□01-出会い。
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「あんた、この世界は狭すぎるって顔してる」
亜希(アキ)は心底ビックリした。
その驚きは隠れもせず、私の顔全体に煌々と表れ、目は有り得ないくらいに丸く見開かれている。
“なんだコイツ”
それがこの男、樫屋悠太(カシヤユウタ)の第一印象だった。
‐01-出会い。‐
誰だってそう思うだろう。
少なくとも、少女漫画の様な薔薇色の出会いには、感じられない筈だ。
ボサボサに伸びたツンツンの髪(洗ってるのだろうか)、ヨレたジーパン、薄汚れた白Tシャツで、爪先に泥まみれのサンダルを突っ掛けていて。
オマケに到底似合ってない、楕円形のブラウンレンズが彼の目を覆っていた。
“時代に置いて行かれた浪人生”
そんなフレーズがぴったり。
「な、そうだろ」
その男は本棚に右腕を預けて、ニヤリと私を見下ろし言った。
「…新手のナンパですか?」
ほぼ無表情に返す。
「なんだなんだ、まだ若いのにひねくれてんなぁ」
ずり落ちているサングラスをくいっと押し上げながら、彼は意外そうな顔をした。
「あんた、今ヒマか?」
「やっぱりナン」
「違う、断じて違う。
なぁ、オレに着いてこいよ。
よくわかんねぇけど…きっと良かったと思うぜ、あとで」
「……………」
全く意味がわからない。
本人すら、よくわからないと言っている。
なのに。
なんでそんなに、自信満々?
「…いいよ、退屈しのぎになるなら」
面白い、と久々に思った。
私は、今、この世界がつまらないのだから。