幕末志士の恋愛事情
□星に願いを
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「笹の葉、さーらさら」
今日は7月7日…
天の川がキラキラと輝き、織姫と彦星が一年に一回会える大切な日
一年に一回しか会えないのなんてどんなにつらいだろう?
私は…嫌、だな…
すぐそばで…彼の暖かさを感じていないと落ち着かない…またいなくなってしまうなんて…考えられないよ…
私、こんなに弱かったかな…
「おい、どうした?」
「え?ぁ…以蔵…」
「何をしている?そんな紙っ切れ、どうするんだ?」
隣にドスンと腰を落とし、胡座をかいて手元を覗き込んでくる。
「ほら今日は七夕でしょ?お願い事書こうかなって」
「ああ、だからアレか」
目線を反らしアレへと向ける。私もつられてそれを仰いだ。
以蔵にお願いして取ってきてもらった笹。天まで届くように高い、高い笹を…
「お前は何を願うんだ?」
「私は…」
私の願いはいつでも変わらない。
「私は…」
そばにある太い筋肉質な腕に手を伸ばす…あったかい…以蔵の体温
「お、おい…」
顔を見上げると必ず目に付く、頬の大きな傷痕…私はその傷を撫でるように指をそわせた。
一度は失いかけたこの暖かさ…もう二度と手放したくない…
「…また泣いてる」
以蔵にそう言われ、私は自分の頬に伝うものに気が付いた。涙をすくい取るように指が触れ、私の気持ちも一緒にすくってくれる。
「私の願いは変わらないよ。多分…ううん、この先ずっと…」
「その願いは今叶っているのに…か?」
「うん、それでも…それでも毎年必ず願うんだ。以蔵と…」
『ずっと、ずっと…以蔵と一緒にいれますように…』
そうだ…
武市さんのお見舞いに行くときに、短冊も一緒に持って行こう。
それで、みんなで天の川を見ながら笹をあおぐんだ。
きっと夜風になびく笹は綺麗なんだろうな…
以蔵の優しい体温を唇に感じながら、私はそう思った。
終
裏のうの文字すらなくてスイマセン!!