●AM3:00君想ふ
−sideリョーマ−
ふと、目が覚めた。
カーテンからはまだ光が差し込む気配は無くて、広い寝室には間接照明の微かな灯りだけ。
身体を包み込む優しい温もり。
リョーマは、目線だけを上げて小さく寝息を立てて眠る恋人をじっと見つめた。
こうして彼の寝顔をゆっくり見るのは初めてかも知れない。
酷く敏感な彼は、少しの物音だけでもすぐに目が覚めてしまう程に眠りが浅いのだ。
だからこうして、自分が偶然に目を覚ますことがなければきっとこんな風に寝顔を見ることなんて適わなかったはず。
眠っていても綺麗な顔だ。と、リョーマは思った。
眠っているのに、隙が無い。
彼は眠っている間でさえ《跡部景吾》と言う確立された人間なのだ。
人の上に立ち、人を纏めて、頂点に君臨し続ける。
生まれもったカリスマ性。
生まれる前から選ばれし人間。
その運命を彼は受け入れ、周りの期待に応えて生きている。
すごい。と、思う。
だけど、それが彼を雁字搦めにしているのではないかと心配になる。
彼の口からは決して弱音は出ない。
まるで、弱音を吐くことを知らない子供のように、維持でも独りでやり切る。
その影でどれだけの努力をしていることを知っている人間はほんの数人だ。
だから、傲慢と言われ陰口も叩かれ、知らず知らずの内に敵を作る。
決して努力する姿は見せない。
報われない。
だけど、それが《跡部景吾》と言う人間なんだ。
『無理しないで』
面と向かって言えない言葉。
言葉にするのは簡単だ。
だけど、言えない。
きっと俺がこの言葉を言ってしまえば彼はもっと無理をする。
もう二度と俺に心配をかけさせないように、もっともっと頑張ってしまう。
だから、言えないんだ。
俺の事を護るように抱き締めて眠る彼。
一定のリズムで聞こえてくる心地良い彼の心音。
広い胸元に頭をすり寄せ、ぎゅっと身体を丸めて、瞼を閉じる。
包まれて与えられてる温もりを、少しでも彼に分け与えれるように。
『アンタは、十分頑張ってるよ。』
口には出せない想いを抱きながら、再びリョーマは眠りの世界に引き込まれていった。
ーendー
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