地下書庫

□第3章 希望の戦士たち
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闇の雨[セナス海の悪夢]※ギャグ・ラブコメ

30年5月22日午後14時57分
セナス海輸送艦サザンクロス甲板〜交戦中〜

オッス!グリードーです.
なんてことはないさ.
敵の船の数が多いからって実際は、
小型輸送艦の寄せ集め.
こっちの女王様には、かないっこないってわけさ...
そのはずだった...
さっきとは違い、敵の発見も早かった上に、
今度は海上戦.
船が避ける為の場所もいっぱい.
従来の体当たり戦でも、負ける事はない.
戦艦もいっぱい.
味方艦載部隊もいっぱい.
死角なんてなかったさ...

味方軍『よし!見えてきたぞ!!』
味方軍『デルタ隊は、潜水攻撃をおこなえ!!残りは、上空戦闘だ!!』
敵軍『チクショウ!!先手をとられた!!なんだこの金ピカのやつは!!まるで機動がちがう!!』
シロン『至近距離で切りつけるぞ!!急降下する!!』
カーくん『ヒエェェェェーーーー!!』
シュウ『大丈夫?』
カーくん『なんで平気なのーーーーー!?』
シュウ『さあ?』

俺は、敵のど真ん中を突っ切り戦艦部隊の中心に来た.
敵のやつ大慌てで、俺を追ってきやがった.
そんな事はお構えなしに、敵の旗艦らしき船を、思いっきり切りつけてやったんだ.
戦闘開始から10分.
最初に沈没したのは、敵旗艦だった.
おかげで、敵の陣形はズタズタ.
こうなれば、こっちのものさ.

敵軍『ドワァァァァ!!きっ、機関室に浸水!!損害甚大!!』
シロン『みやがれ!!これが特訓の成果だ!!』
敵軍『昨日は、あんなやついなかったぞ!?』
敵軍『アマデウスを倒したやつじゃねえのか?』
敵軍『チクショウ!!逆にこっちが奇襲を掛けられた!!』
味方軍『昨日の仕返しだ!!容赦をするなよ!!』
ガリオン『シロン、よくやった.大いなる働きに感謝する.
少し早い気がするが...隊長.ここはまかせた.
ガリオン突撃開始!!』
ファル『ひっ、姫様ーーー!?』
オドネル『行きましょう!!』
ファル『オドネル!?』
グリードー『シロン!!でしゃばんじゃねえ!!』
ウォルフィー『ひがみか?...ドワアァ!!急に傾くな、リーオン!!』
リーオン『うータンゴメンよ.』
バコ!!

シロン達は、難なく敵軍を追い詰めていった.
すると敵軍は何を思ったか、ストーム艦隊に突撃を開始してきた.
しかし、怯むことなくストーム軍ご自慢のランチャーが、次々とネクロム戦艦部隊を沈めていった.

味方軍『やっぱすげえな...向こうの大砲よりも飛距離がある.近づく前に沈んでいくぜ!!』
味方軍『こちらグリフィン団臨時指揮官!!俺たちの獲物がなくなっちまうな.
少し前にでるか?...』

余裕が出てくると今度は、獲物の取り合いになる.
不思議なものだ.
殺し合いが好きなものは滅多にいない.
だが優勢になると好戦的になるのは、彼らの本能だろうか?

敵軍『チクショウ!!新型兵器はまだなのか!?』
味方軍『無線を傍受!!新型兵器がある模様!!十分に注意せよ!!』
敵軍『味方が苦戦中...やはりな.』
敵軍『しょせん捨て駒だ.発射せよ.』
敵軍『しかし近海には、味方軍が!!』
敵軍『発射しろ.エネル弾チャージ!!』
シロン『ん?どうしたんだシュウ?真っ青だぞ?』

その瞬間だった.
シュウが血相を変えて、シロンの背中にしがみついたのは.
これが何を意味するものなのか、シロンは解らなかった.

シュウ『逃げて......逃げて........』
カーくん『シュウ?』
シュウ『早く逃げて!!』

突然シュウは、大声で叫んだ.
さっきまでの冷静さはまったくない.
グリードーやガリオンにも声が届いたようで、
何事だ!とばかりに問いかけてくる.
しかしシュウは、シロンの背中で震えて続け、
逃げろと叫び続けるばかりであった.

シュウ『いやだ!!来るな!!』
シロン『おい!!シュウ!?』
味方軍『弾道エネル弾接近!!』
味方軍『すごい波長だ...危険圏内をスフィアに転送する.
大丈夫だな...全ての艦が安全圏に回避.』
味方軍『目標視認!!着弾まで20秒!!』
シロン『ほら.大丈夫だって言ってるぞ.ん?』
シュウ『ちがう...あれは........』
シロン『?』

カウントが徐々に少なくなっていく.
最近の技術は、着弾時間まで計算出来るのだから驚きだ.
スフィアを開発したやつは、まさに天才だな.

味方軍『7、6、5、4、....ツ、ヅーーーーー.....』

一瞬目の前が紫色の光で覆われた.
俺は、何が起こったのかまったく解らなかった.
耳に響いているのは、鼓膜が破れんばかりの炸裂音.
ふとスフィアに目をやる.
こういうときは、できる限りの情報を集めるに限る.
だがみない方がよかったのかもな...

シロン『......うそだろ.....』

誰もがそう思った.
スフィア上にぽっかりと開いた穴.
静まり返る辺り...
それを破る通信がもうまもなく入ってきた.

味方軍『味方編隊消滅!!バリトリアム1、2!!バレッグ1、3、5、6がマップ上から消えた!!』
ガリオン『なんだと!?』
味方軍『なんなんだ、今の攻撃!!』
味方軍『周辺区域の艦載部隊も消滅!!』
グリードー『耳鳴りがひでえ!!生きてるか!?リーオン!!ウォルフィー!!』
リーオン『ワワ、ワワワ!!』
ウォルフィー『落ち着けリーオン!!』
敵軍『味方部隊の大半が消えたぞ!!俺たちもろとも殺すきか!?ふざけんじゃねえ!!』
ガリオン『どうなておる!?情報収集班!!』
味方軍『高度6000フィート以下の部隊が消滅!!』
シロン『水中部隊は!?ロッキーは!?』
味方軍『すみません!!水中部隊は、生き残っている模様!!』
ロッキー『無事生きてますよ!!』

状況がまったく解らない状態になった.
ケガしたわけもなく、力なく落ちていく者.
錯乱し、分けもわからぬ方向へ逃げていく者.
まさに地獄絵図とは、このことであろう.
あのガリオンですら、錯乱しているのである.
冷静さを保っているものはいなかった.
敵軍も例外ではない.
今の攻撃によって、ほぼ壊滅状態になったのだから.
さっきの弾道エネル弾を一言でたとえるならば、
まさに”闇の雨”がふさわしいだろう.
シロンですら、死を覚悟したそんなときだった.
そんな中一人だけ冷静さを保っているものがいた.

グリードー『落ち着け!!回避出来るぞ!!』
味方軍『今の誰だ!?』
グリードー『こちらG・W・ニコルリーダーグリードー!!
今から指示をする!!生き残りたけりゃおれに従え!!』

誰もが疑いなくその指示に従った.
もはや頼れるのは、彼しかいなかったのだろう.

グリードー『いいか!!あの攻撃は、高度6500で炸裂した!!
着弾予測時間を炸裂予測時間に変更!!
4秒早くカウントを終わらせるように設定しろ!!
カウントゼロまでに、被害予測圏内をスフィア上に表示しろ!!
圏内のやつは、上空に退避するか、水中にもぐれ!!船にかまってるばあいじゃねえぞ!!』
味方軍『了解!!先程のデータから、被害予測圏内を計算...って!!マジかよ...
転送準備完了...え...第2弾に備える...』
味方軍『いやだー!!死にたくない!!』
敵軍『上空に逃げるんだ!!急げー!!』
味方軍『なんだってんだよ!!』
敵軍『砲撃成功!!やったぞ!!』
敵軍『もう一発かましておくか.』
シュウ『また来る...』
シロン『大丈夫だ!!俺が守ってやる!!』

とにかく夢中だった.
高度3000フィート付近にいた俺は何を思ったか、上昇を開始した.
普通なら水中に潜ってもいいぐらいなんだがな.

味方軍『弾道エネル弾第2弾探知!!安全圏に逃れるんだ!!』
味方軍『サザンクロスとその周辺以外の護衛艦バレッグ16、18、20以外は、駄目そうだな.』
コーカス『全力で脱出する.スクリューを逆回転させよ!!』
敵軍『どこまで上がればいい!?』
味方軍『俺は、水中に逃げる!!』

いろいろな会話が混線状態になった.
敵味方問わず、必死にその場から逃れようとしていた.
船を捨てる者、
泳げずに、他者の手を借りる者、
無線を聞かずに、錯乱を続けるも者いた.
とにかく必死だった.

味方軍『着弾まで20秒!!』
味方軍『昇れ!!昇るんだ!!』
味方軍『もう間に合わない!!』
シュウ『いやだ....助けて!!』
グリードー『リーオン!!どこに行っている!?』
リーオン『大丈夫!!安全圏だよ!!』
ガリオン『くっ...』
味方軍『着弾まで10、9、8...』

また恐怖のカウントダウンが始まる.
この時点で、もう間に合はない者もいた.
シロンは、その現場を目撃しないように自らの目を手で覆った.
そして

味方軍『3、2、着弾!!今!!』

再び響きわたる爆音.
生きている心地は、誰しもがしなかったであろう.
しばらくまたあの沈黙が始まる.
サザンクロス船内では、突っ伏している者もいた.
再び報告の無線が入る.

味方軍『バリトリアム3、4、バレッグ9、10、14、15消滅!!』
味方軍『こちらバレッグ16!!船首に被弾!!沈没する!!退艦急げ!!』

辺りがしばらく慌ただしくなっていた.
おそらく第3弾が来るかもしれないからであろう.
まだ安心はできない.
しかしそれを打ち破るかのごとくシュウが言った.

シュウ『いやだ.....いや...だ............あれ?
みんなどうしたの?』
シロン『お前覚えてないのか?』
カーくん『一時的な記憶の混乱だね...』
グリードー『シュウ!!つぎも来るか!?』
シュウ『え?何が.....あっ、そうか...怖いのが......ハハハ.....』
グリードー『...大丈夫か?』

シュウは、力なく笑った.
やっと状況が理解出来たのだろう.
彼には特殊な力がある.
それは、時として最大の障害にもなるのである.
ただ言える事...生き残った...それだけだろう...

?『こちらストーム軍第3艦隊合流部隊.状況を報告せよ.』
敵軍『ウォックストーンは、これ以上もたない.引き上げるぞ.』
敵軍『味方の救助は?』
敵軍『ほおっておけ.』
味方軍『生き残った艦は、サザンクロスとバレッグ18、20だけだ.』
味方軍『一体何があった?被害状況が酷すぎるぞ.』
ガリオン(ウォックストーン?....何処かで聞いた事が.....)
ローレンス『これ〜〜〜から、救〜〜〜〜〜助にうつ〜〜〜〜〜〜〜〜〜る.』
シロン『.............なんだったんだよ...』
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