地下書庫

□第3章 希望の戦士たち
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包囲網[セナス海の攻防]

30年5月22日午後13時06分
セナス海輸送艦サザンクロス甲板〜ナイアド軍港にむけ航行中〜

一面に広がる青い海、雲一つない美しすぎる空...
たちこめる磯(いそ)の香り...
船の程よい揺れが、俺を眠りに誘う...
これほどまでの幸せがどこにあるだろうか?

グリードー「.........」(半死半生)
シロン「ガ........」(意気消沈)

甲板にいるネズミと巨大トカゲ...
昨日からずっとこの状態が続いている.
スコアーバトルで負けた事がよほどショックだったのであろう.
人生の黄昏を感じているようであった.

グリードー「52って...」
シロン「ガガガ、ガアガガ...」
(訳、部下に、負けた...)

その様子を黙って見つめている者がいた.
シュウとカーバンクルとW・ニコルであった.

シュウ「重症だね;」
リーオン「シロタン昔から傷つきやすかったから...」
カーくん「あれが、わが隊長とは...」
ウォルフィー「それに比べ、ロッキーはガリオンにほめられてご満月だな.」
リーオン「ロッタンずっとニコニコしてたよねー.」
ロッキー「僕がどうしたんですか?」

突然噂の主が後ろから声をかけてきた.
当然みながそちらを向く.

シュウ「お!」
ロッキー「シロンさん大丈夫でしょうか?心配です.」
ウォルフィー「ほっときゃ大丈夫だろ.」
ロッキー「僕になにかできる事があればよいのですが...」
カーくん「前から気になってたんだけど、なんでそこまでシロンに慕うの?」
ロッキー「シロンさんは、すばらしい御方です!僕を助けてくれた御方ですから.
僕は、自分の過去にずっと捕らわれてたんです.
でもシロンさんが、『本当の恐怖ってなんだ?よく考えるんだな.』って言ってくれたおかげで、
僕は、立ち直れたんです!!
シロンさんは、僕が仲間が傷つくのを恐れていたことを解らないでいました.
しかし、シロンさんが教えてくれたんです!!
僕が、ふさぎこんでいただけだってことを!!
あんなにすばらしい御方はいません!!」

ロッキーは、力の限り自分の思っている事を話した.
みながそれに聞き入っていたが、
一人だけちがった...

シュウ(ロッキー...夢を壊すようでわるいけど、
シロンは、もっと単純に弱い心が駄目だってことをいいたかったんだよ...
誰でもいいそうな題詞でね...)

シュウは、心の中で深くつぶやいた...

所変わって、艦長室では...

同年同日午後13時21分
セナス海輸送艦サザンクロス船長室〜ナイアド軍港にむけ航行中〜

コーカス艦長.
歴戦の船サザンクロスをここまで生き長らえさせてきた男だ.
艦が、最新鋭装備に改造した後も引き継いでこの船の艦長をやっている.

コーカス「いやいや...私なんか、戦うことのできぬおいぼれにしかすぎません.
今まで経験した戦も負け戦ばかりですよ.」

彼は、そう言っているが、
30年前の戦争でいくつもの輸送作戦を全て成功させているベテラン艦長なのだ.
この船がここまで生き長らえたのは彼のおかげでもあろう.

ガリオン「今回の水上指揮見事でした.」
コーカス「たしかこの船を造ったのは、あなたとキリシ様でしたね.」
ガリオン「土の者たちは、今まで封鎖的な国でした.
その時代は、終わりを告げなければなりません.
時代は、世界へ目を広げる時代が来たからです.
しかし、その矢先にこの事態ですよ.
無事に合流出来るといいです.」
コーカス「しかし、なぜ今になって私が艦長なのでしょうか?
引退と思えばこんな大役を任されるのでびっくりしましたよ.」

彼は、不思議であった.
たしかにこの船の初代艦長は、彼なのだが、
古株の時代はもう終わりを告げたと彼は考えていたからである.
その疑問にガリオンは迷いなく答えた.

ガリオン「新しきものを受け入れる人物だからです。古い考えに捕らわれているようでは、時代の変化はいっこうにきません。あなたがこの船の艦長に任命した理由は、その考えがあったからです.いくら未来ある新人だからと言っても、この船を受け入れるのには、相当な覚悟が必要です。そこで...」
コーカス「 時代を受け入れる勇気がある、私たちを選んだわけですか。なら私の役目は、後継ぎをつくる事ですね。柔軟な考えを持った若者に、この船を受け渡すまで、まだまだ現役でいなければなりませんな.」

ストーム軍は、基本的に戦いを好まず、
古い伝統を守る傾向が全体的にある種族である.
その中で、唯一常に新しい考えを求める男が彼なのである.
まさに、この艦にふさわしい人材であろう.

コーカス「船は、まだまだ港に着きません.ゆっくりと景色をながめていたらどうでしょうか?」
ガリオン「ではそうしています.」

同年同日午後14時09分
セナス海輸送艦サザンクロス船内〜ナイアド軍港にむけ航行中〜

ガリオンが景色をながめていると、
シュウがもうダッシュで息を切らしながら走ってきた.

シュウ「いたいた!!ハァハァハァ......」
ガリオン「どうしたのだ、そなた?」
シュウ「闇の気配がする...」
ガリオン「!!それは誠か!?」
シュウ「かなりの数だよ...ハァ....きっと昨日のやつらの....」
ガリオン『緊急戦闘警報をならせ!!レーダー班は、敵が映ったら直ちに数を知らせよ!!』

急に船内が慌ただしくなる.
レーダーには、まったく敵の姿は映し出されていない.
シュウの能力を知らない者たちは、ただと惑うばかりであった.
模擬演習と勘違いするものもいた.
しかし、戦闘配置が完了してからしばらくして、それが嘘でない事を知らされた.

レーダー班『こちらレーダー班!!前方よりネクロム艦隊が接近中!!数50!!艦名は不明!!』
ソナー班『こちらソナー班!!不振な音をキャッチ!!小さいがスクリュー音と思われます!!』

それと同時に、艦載部隊も甲板に集合した.
シロン達も例外ではない.
敵は、すでに艦載部隊を発艦させたようである.
だが気づくのが早かった為に、こちらもいつでも応戦出来る状態にあった.

ロッキー『せっかくネズミのバイキングを楽しんでいたのに!!』
カーくん『駆除の間違いだろ!!』
グリードー『やはり包囲網を張っていたか.』
ウォルフィー『なんでわかった?』
グリードー『昨日の部隊は、先行部隊さ.用心深いやつらの事だ.本陣は、わざと残しておいたのだろう.』
リーオン『最初から負ける事を予測していたみたいだねえ.』
味方軍『艦載部隊!!全員発艦を許可する!!俺たちの船を守ってくれよ!!』
味方軍『近づく前に全員沈めるぞ!!』

空は、瞬く間にシーホースの軍団で埋めつくされた.
グリフィンやシロン達も例外ではない.
敵は、シュウの能力を知らなかった.
だからここで戦闘準備が完了していない戦艦部隊に再び奇襲をかけるつもりであったのであろう.

敵軍『おい!!敵船から艦載部隊が上がってくるぞ!!』
敵軍『やつらのレーダーは、こちらの性能を上回っているという事か!?』
敵軍『そんなはずはない.調査隊が完全に調べ上げたのだからな.一体何が起こっている?』

今回は、力と力のぶつかり合い.
こちらにも勝算があった.
ネクロム軍がスクリューシステムを奪っていた事は予想外であったが、
シロン達の活躍で何とかなるであろう.

シロン『今回は、敵の船を沈める。スピードよりも、パワーが必要だ.行くぜ!!』
シュウ『鎧の上って、滑りやすいね;』
ロッキー『潜水して、敵の船底に穴をあけるから、カーくんをよろしくお願いします!!』
カーくん『鎧って滑りやすいよ;』
シロン『潜水って!!お前そんなことできんのか!?』
シュウ&カーくん『聞いちゃいねー!!』
ロッキー『僕は、あらゆる属性に変化出来るレジェンズですよ!ストームチェンジすれば、水の中から攻撃が可能です!木製の船だから、水中から攻撃すれば、安全に致命傷が与えられるでしょうし!』
シロン『そいつは、頼もしいな.よし!!ウィングス行動開始!!』

そのときはまだこうなるなんて思ってなかったんだ.....
別に苦戦していたわけじゃないんだがな......
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