執事と吸血鬼
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前回の話から少し前に遡る。
今日はサーヴァンプ定例会議の日。リリィから定例会についてのメールが届いた日から遥良は真昼に自分も行きたい、ついて行きたい、行かせろ、としつこく言っていた。しかし真昼からはダメの一点張り。それも当然もと言える。なぜならば・・・
「なぁ真昼ぅ〜!俺もいーきーたーいーっ!」
「ダメだって言ってんだろ!?お前がいたらロクなことにならないし話が進まなくなるし、何よりめんどくさい!」
「ンなぁ!そんなハッキリ言わなくてもいいじゃん!!」
「だいたいお前は下心が丸見えなんだよ!」
「うぐっ・・・そ、そんなわけないじゃん?俺は常に真摯で紳士なイケメン執事のお兄さんだよ?!英国紳士もビックリするくらいの紳士っぷり発揮しちゃうんだからねーっ!だから女の人がいるくらいで興奮したりしな」
「あっ、可愛い子いる」
「えっ!?何処!?」
「・・・・・」
「ハッ!!違う!今のはー、その・・・そう!男の条件反射!お前だって可愛い子がいたら思わず目で追っちまうだろ?つまりは
そういうことなんだよ!だから俺は悪くない!本能にうっかり従ってしまっただけなんだ!」
「・・・お前が定例会に行きたい理由は?」
「真昼とクロの保護者としてついて行く!」
「・・・・本当は?」
「ザ・マザーさんに会いた「なんで正直に言っちまうんだよ!!」ハッ!しまった!真昼め、貴様謀ったな!」
「お前が勝手に正直に言っただけだろうが!!」
こういうことである。
それから真昼はしつこくせがんでくる遥良から必死に逃げ回っていた。時には段ボールを使ってステルスもしていた。それくらい必死だった。もちろんあの馬鹿も必死だった。大変くだらないが本人達は至って本気だ。
そんな下心だけで動く様な馬鹿から逃げ切った真昼は人気の少ない空き教室まで行くと被っていた段ボールを取った。
「〜〜〜〜っ!!はぁぁぁ!!逃げ切った!やり遂げたぞ俺は!」
「まぁ待て安心するのは早いぞ」
猫の姿のクロが背負っている鞄からひょっこりと顔を出す。
「なんだよクロ、大丈夫だって!また見つかりそうになったらスネークすればいいんだから」
「おいツッコミキャラがボケに走るな、やめろって」
「お前何の話してんだ?まぁ、いいか。教室戻って次の授業の準備しないと「みーっけた!」うわあぁぁああぁぁぁ!!!!??(本気の悲鳴)」」
いつのまに現れたのか、自分達の背後で満面の笑みを浮かべた遥良がそこに居た。暗い教室の中での遥良の笑みはまるで狂喜を孕んでいるかのように見える。ぶっちゃけ怖い。
「お、お前いつのに間に!?」
「かき消されつつある真昼とクロの匂いをたどってここに来た!」
「犬かお前は!?」
「つーか匂いとか・・・キモいなお前・・」
「はいそこ!キモイとか言わない!!嗅覚が鍛えられていると言え!!」
「いやそうだとしても、俺は絶対にお前を連れていかないからな!」
「なんで!!!」
「なんども言わせるな!お前は絶対連れて行かないからな!!」
それだけを言い残すと真昼は鞄を持ち直し段ボールを構えながら、また遥良から逃げ出す。
すかさず遥良も真昼を追うが真昼はすでにいなかった。
「真昼の霊圧が・・・消えた・・・!?」
そんなわけはないのだ。
よく見ると不自然にも段ボールがあるのだ。あるのだが
「くそぅ真昼め!どこへ行った!まぁぁぁあぁあぁぁぁひぃいぃぃいぃぃぃるうぅぅぅぅうぅぅぅぅ!!!!」
まったく気づかないとは、イケメン執事とはなんだったのか。それでもめげずに遥良は真昼の名を叫びながら真昼を探しに学校中を走り回りに行った。
「・・・行ったか?ふぅ・・・ホントしつこいなアイツは」
「つーかなんで気づかねぇんだアイツは」
「馬鹿だからじゃないのか?よし、今度こそ教室に戻ろう」
被っていた段ボールをたたみ腰を上げる真昼。チラリと遥良が走り去っていった方を見ると呆れた顔をしながら溜め息を吐く。
「(最初会った時はあんな感じには見えなかったんだけどなぁ・・・)」
なんでこんなことになったんだか・・・。そうしてまた溜め息を吐くとその場を離れた。
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