英雄の兄と落ちこぼれの妹

□相容れない蛇
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「あの英雄様と離れる気になったのはいいけど、まだホグワーツに通う気があるなんてね
ダンブルドアのお膝元だよ?
印を見られたら一発でアウトだろうに…」


アームウォーマーを外したリアンにリドルは言い放つが、呆れた表情でリアンは突っ込む


『それを分かってるくせにこんな目立つ場所につけたのはリドルでしょ…』

「目立つ場所じゃなきゃ意味が無いだろう」


反省の色が見えないリドルにこれ以上言っても仕方ないと、リアンは深く溜め息を吐いた


『でもリドルなら蛇の印に対する扱いを知っていたんじゃないの?』

「知るわけないだろ
むしろあいつも知らないんじゃないか?」


五十年以上活動出来なかったリドルに忌避される原因であるヴォル

知らない可能性は十分にあるが、レギュラスは確実に知っていたはず

なぜ言ってくれなかったのだろうか…


『っていうかスリザリンのシンボルと闇の印ってだけで嫌うなんて失礼だ
蛇は神の使いや神そのものとして扱われてるし、“生命”や“永遠”の象徴でもあるんだから何かしらに使うだろうに…』


不満気に手の甲の印を撫でるリアン

極端過ぎると悲観する彼女にリドルやサラは優し過ぎるのも考えものだと思った

人間は理屈じゃない

理不尽なことでも成り立つのは己の感情を優先させるせいだ

けれどもそれが人間なのだ


「人間ってそんなものさ
それとも消すかい?」

『隠しはするけど消さないよ
ぼくは好きだもん』


そう言ってバジを撫でるリアン

何の迷いもなく好きだと言ったリアンにバジは純粋に嬉しく思った


『隠すのだってハリーがうるさそうだからなだけで、ハリーが居なければホグワーツでも多分隠さなかったかな
蛇の印がどういう扱いか知らなかったし
まぁ知ってても隠さないと思う
法で罪だと定められているわけじゃないんだからぼくの勝手だし、レギュラスの様に立場があるわけじゃないしね』

「…君って真面目な優等生に見えるけど意外にハッチャケるよね」

『それリドルに言われたくないな
真面目な優等生だったのに闇の帝王になってるじゃん』


真面目な者ほどはっちゃけると怖い

その代表的なのがリドルでありヴォルだろう


『セドリックはもうすぐ卒業しちゃうし、ドラコとも一緒に居れる残り少ない時間を大切にしたいからまだホグワーツには行くよ
見つかったら見つかった時だけど、それまでは下手に疑われてヴォルの肉体を取り戻せてない今の状況で面倒を起こす気はないかな』


制約魔法も無くなり、分霊箱も集まった

早くヴォルの肉体を取り戻すべきなのだろうが、まだその手段が確立していない

リアン自身、少し考えがあったからこそ分霊箱を全て集める必要性を見出したのだが、魔法理論の組み立てに手間取っているのが現実だった

生物学的理論の上では肉体の成分と魂、そして血縁者の血があれば肉体は取り戻せるだろう

だがそれには魔法の力も必要なのだが、肉体の生成なんて完全に闇の魔術で、その知識はヴォルやサラから貰ったものだけのリアンには魔法理論をどう組み込んでいけばいいか分からないのだ


《あぁ、そういえばその先をまだ言っていなかったな》


あいつのことは優先度が低いせいですっかり忘れていたと言うサラにリアンは目を丸くする


『えっと…』

《でもまぁ今すぐという訳にもいくまい
ホグワーツに行くのならまだあの猫の中に居て貰わねば困るだろう?》

《ご主人様を待たせるのですか?》


ナギニが難色を示すがサラは知ったこっちゃないと言わんばかりに聞く耳持たずあしらう


《ほぼ無条件にリアンから魔力を恵んでもらっていた癖に…
そのぐらい待つのは当然だろう》

《ご主人様に向かって無礼ですよ…
何様のつもりですか?》

《貴様こそ
誰に物を言ってるんだ?》


険悪なムードのサラとナギニにリアンは慌ててサラを抱き上げて止める


『サラ、仲良くしてってば…
ナギニさんもごめんなさい
でも今はまだ何の準備も出来てないですし…
ようやく杖が手に入ったばかり
それに元死喰い人がワールドカップにも来るんでしょう?』

《…えぇ、そうですよ》

『その人や、他の死喰い人の方々を集めて準備してからでも肉体を取り戻すのは遅くはないですし
それに正体がバレずにホグワーツに居れるのは大きなメリットではありませんか?』


リアンの言葉に同意するナギニは苛立ちを抑えはするものの、やはりまだ不満気ではあった


「リアンに頼らずに肉体を取り戻す場合でも今すぐには実行出来ないんだ
もう少しぐらい構わないさ」


最終的にはリドルの言葉でようやく納得したナギニにリアンはホッと一安心する


《愚かな主人を持つと苦労するな》

《何ですって!?》


…安心出来そうになかった

サラに威嚇するナギニにリアンはこの二匹の仲の悪さに不安を覚えながら仲裁するが、その後も度々サラが余計な事を言ってナギニを怒らせるというのを繰り返し頭を抱えた


『サラはバジ以外と仲良く出来ないの…』

《あやつらが気に食わんだけだ》


サラの言葉に深く溜め息を吐くリアン

気が遠くなりながらリアンはサラが余計な事を言わないように抑えながらバジを撫でて癒しを求めるのであった







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2017/09/26
*あとがき
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