英雄の兄と落ちこぼれの妹

□相容れない蛇
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「リアン」


レギュラスの部屋から出て、自分の部屋に戻ろうとしたリアンは呼び止められる

振り返れば…


『ドラコ?
どうしたの?』

「ちょっといいか?」

『…うん』


緊迫した雰囲気のドラコにリアンは大人しくついて行き、ドラコの部屋で話をする事になった

大体予想はつくが…

リアンがジッとドラコを見つめると、意を決してドラコは話し始める


「レギュラスおじ様の手首…
あれは闇の印ではない
あれが何かリアンは知っているか?」


…やっぱりそうか

さて、どうしたものか…


『…知ってるよ
闇の印ではない事も
でもそれがどうしたの?』

「いや、気になったというか…
蛇があったから少し気になって…」

『蛇…?』


「蛇は元々スリザリンのシンボルになっている
だが闇の印が出現して以降、その身に蛇を刻む者は完全に居なくなったと言っていい
それは闇の帝王が失脚している今でも…だ」


忌避されているスリザリンのシンボルな上に闇の印として使われる蛇は、そのものすらも忌避される様になったのだ

だがレギュラスの印には蛇が組み込まれている

闇の帝王に臆する事なく蛇を使う人物が存在していた事が気になったと言うドラコに、リアンは小さく溜め息を吐いた

これは本格的にホグワーツで印は出さない方が良いかな…


『よく知らないけど、大丈夫だと思うよ
レギュラスはとても頭が良いし』

「む…そうなのだが、シリウス・ブラックのせいでブラック家…いや、レギュラスおじ様は立場的にとても不安定だ
そんな状況の中、あれを見た者が居たら今以上にレギュラスおじ様は…」


レギュラスが死喰い人だったと知る者は少ない

だが全く居ないわけではない

何に魔法省に力を貸すわけでもなく、だが闇に属するわけでもなくグレーな存在としてレギュラスは腫れ物のような扱いをされている

そんなレギュラスをドラコは心配し、最悪の状況を懸念していた


『…それこそ判断するのはレギュラスだと思う
蛇を使っているとはいえ、闇の印ではないんだから何か言われる筋合いなんてないよ
大丈夫、レギュラスを信じよう?』

「…そうだな」


肩の荷が下りた様な表情のドラコ

レギュラスを慕っているのだろうドラコはずっと光側でも闇側でもなく、たった一人でブラック家を担う彼を心配していたようだ


「そういえば左手だけそれを着けているようだが…
どうかしたのか?」


そう言ってドラコが指差したのはリアンのアームウォーマーだった

ドラコがこの左手にある二つの印を見たらどんな反応をするのだろうかと思いながら、リアンは微笑む


『名付け親からのプレゼントなの
杖腕は大切にしないといけないって
ちょっとした守護魔法が掛けられてるんだって』

「それは便利だな
そういえばリアンの名付け親って…」

『シリウス・ブラックじゃないよ
ぼくの名付け親はリーマス先生』


少し驚いた様子のドラコだったが、クリスマス休暇の時にリアンと共にルシウスから学生時代の話を聞いて、リーマスと両親が仲が良かった事を知る彼はそうかとだけ言って終わった

狼男だと知っているだろうに、それ以上何も言わないドラコに感謝しつつ、リアンはそっとアームウォーマーの上から印を撫でた







2017/09/24

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