英雄の兄と落ちこぼれの妹

□キャンプ場へ
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「リアン、少し外を見て回らないか?」

『うん』


ドラコの誘いをリアンは快く受け、一緒にログハウスを出る

サラとバジはログハウスに残ったが、ヴォルはついて来るようでリアンの肩に乗った


『三日前でも賑わうんだね』

「そりゃあそうさ
クィディッチの世界大会なんだ
魔法省なんて丸一年以上掛けてこのワールドカップの準備をするんだからな
それを考えれば三日前も当日さながらな賑わいだろう」


そういうものなのかと納得するリアン

リアン自身が夢中になれるものが無いため理解は出来なかったが、納得する事はできた

あちこちで魔法省の役人が魔法使いを注意したり、何かに呪文を掛けたりするのを横目に見ながら、ドラコの後をついて行く


『ドラコ、あれって確かブルガリアの国旗じゃなかったっけ?』


リアンが指差したのは赤緑白の三色の横縞模様の旗だった


「本当だ
じゃあここら辺はブルガリア側のテントなんだな」


ふとリアンはブルガリア側のテントに全く同じポスターが貼られているのに気付いた

無愛想な青年のポスターで、整った顔立ちはしているものの瞬きをして顔をしかめるだけのポスターにリアンはなんだかヴォルに似てると思って笑いそうになる

そんなリアンに気付いたヴォルがジトッと睨んでいたが、ポスターに反応したドラコによって流される


「ブルガリアチームのシーカーのビクトール・クラムじゃないか」

『知ってるの?』

「あぁ
若干18歳でプロ入りした若手の選手さ
ダームストラング校に通っているんだ」


ダームストラングの名前に首を傾げるリアンにヴォルが魔法学校だと耳打ちする

外国にも魔法学校は存在していて、その内の一つらしい


「僕もダームストラングに通うはずだったんだが、あまりに遠いからって母上がホグワーツに決めたんだ」


意外な事実にリアンは目を丸くするが、小さく笑みをこぼした


『よかった…
そのお陰でドラコと仲良く出来たもん
ナルシッサさんに感謝しなくっちゃ』


頬を染めるドラコと歩いていると、前方からフードを深く被り込んだ集団がやって来るのが見える

その集団と入れ違いになった時、リアンはその中の一人が何かを落とした事に気付いた

それは細かい刺繍が施されたハンカチだった

リアンはそのハンカチを手にすぐさまフードの集団を追う


『あの…』


声を掛ければ振り返るフードを被った集団に、リアンは思わず気圧される


なんだコイツ

またビクトール目当てのファンじゃねぇのか?


聞こえてきた言葉がブルガリア語な事に気付いたリアンは、落ちたハンカチの独特な刺繍がブルガリア特有のものだと知る

そしてなぜか聞き覚えのある名が出たのだが、そんなことよりもリアンはハンカチを優先させた


『…えっと、どなたかハンカチを落としたのを見かけたので
コレを…



ブルガリア語が話せるとは思っていなかった様で、フードの集団が驚いた様子でざわめく中、一人がリアンの持つハンカチに気が付いて前に出て来た


それ…俺のだ
わざわざ拾ってくれたんだな
すまない、ありがとう



そう言ってフードをズラし、ハンカチを受け取ったのは蜂蜜色の目が印象的な青年だった


いいえ、お気になさらず
では…



リアンは彼にハンカチを渡し、すぐにドラコの元へ戻ろうと踵を返すが、ハンカチを返した青年に呼び止められる


待ってくれ!
君、名前は?


本当に気にしないで下さい
偶然拾っただけですから


だが…


言い淀む青年にリアンは戸惑うが、ドラコが少し離れた所から名前を呼んでいるのが聞こえて振り返る


「リアン!」

『ドラコ、すぐ行くからちょっと待って!
すみません、友人が呼んでいるので…


そう言って離れて行くリアンに青年は意を決して声を上げた


あ…、じゃあ三日後の試合見ててくれ!
絶対だ!!



元々試合は見る予定なので頷いたものの、なぜ彼は試合を見て欲しいと言ったのかリアンは分からず首を傾げる


「リアン、いきなり居なくなるなよ
心配したんだぞ」


声を掛けてくるドラコにリアンはパッと振り返り、素直に謝る


『ごめんなさい
落し物に気付いて渡してきたの』

「そうだったのか?
だったらせめて一言声を掛けてくれれば…」

『突然の事だったから…
ごめんね、ドラコ』

「いや、無事だったのなら構わないさ
それより…」


ドラコと共に歩き出すリアンの背中を見つめる青年

そんな青年に仲間が声を掛ける


ジブコフ、もう行こう

…あぁ、すまないビクトール

いや…、次の試合にも勝って良い所を見せないとな


ハンカチを大事そうに持つ青年、ジブコフにポスターに写っていた青年、ビクトールは声を掛けて歩き出した

ジブコフもフードを被り直し、リアンの名前を小さく呟きながらビクトールの後に着いて行く

三日後の試合に想いを馳せながら…







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2017/09/21
*あとがき
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