英雄の兄と落ちこぼれの妹
□キャンプ場へ
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クィディッチ・ワールドカップが目前に迫り、ドラコが日頃からそわそわする様になった頃
ルシウスが何処かへ出かけて戻ってきたかと思えば、出掛ける準備をする様に言い渡される
「ワールドカップ当日に赴こうと予定していたのだが…
直前になって三日前に行かねばならなくなった」
溜め息を吐くルシウスだったが、十万人の魔法族が一箇所に集まるのだ
こういうこともあるのだろう
「すまない、リアン嬢
よろしいかな?」
『いえ、お気になさらず
ぼくも準備致しますね』
部屋に戻ったリアンは着替えの準備をする
ルシウスから誕生日に貰ったカバンへサラに教えられた空間拡張魔法と時間停止魔法、永久有効魔法を掛けていたリアンは、そのカバンへ荷物を入れる
「リアン
このワールドカップでピーターに会うぞ」
ヴォルの言葉にリアンは準備の手を止めて僅かに目を見開いた
だが十万人の魔法族が集まる滅多にない機会だ
混雑に乗じて接触するのが妥当なのも確かだった
『お使いさせていたんだっけ
ナギニさんにも会えるってこと?』
「あぁ」
『楽しみだね
バジと仲良く出来るかな?』
《姫さまが望むのであればバジは仲良く致します》
サラと一緒にフードに入っていたバジはスルリと首を伸ばしてリアンの頬に擦り寄る
リアンもバジに擦り寄り小さく笑みをこぼした
「リアン、準備は出来ましたか?」
様子を見に来たのであろうレギュラスにリアンは頷いた
カバンを既に肩に掛けていたリアンはヴォルを抱き上げ、レギュラスと共に玄関ホールに向かった
「キャンプ場へは姿現しで向かう
レギュラスはリアン嬢を」
「えぇ
リアン、お手を」
一足先にナルシッサとドラコを連れて姿現しをしたルシウスを、レギュラスも後を追うように姿現しをする
姿現しをして着いた場所は森だった
だが既に騒がしい声は森の中へまで聞こえてきており、三日前でもこのワールドカップのためだけに集まる魔法族の多さが伺える
「少し歩くがログハウスを確保している
そこらの奴らと一緒にテントなど使えん」
少しピリピリしている様子のルシウスの後を追いながらリアンは霧が立ち込めるキャンプ場を見る
沢山のテントがあり、ほとんどが普通のテントではあったが、煙突やベルを鳴らす引き紐、風見鶏を付けているテントもあった
だが明らかに魔法仕掛けなテントや縞模様のシルクでできた豪華絢爛なテント、前庭付きテントなど
マグルに怪しまれる様なテントも少なくなかった
「はぐれないように…」
『は、はい…』
リアンが余所見をしている事に気が付いたレギュラスが肩を抱き寄せる
リアンは周りの光景に目移りしそうになるのを我慢しながらルシウスの背中を追う
「ようこそ、マルフォイ様
本日は急な申し出を承諾して頂き、ありがとうございます
マルフォイ様のログハウスはこちらでございます」
テントとは別にログハウスが立ち並ぶ場所に着くと明らかに役人っぽい人間がリアン達を出迎えた
案内をする男は腰低くぺこぺこと頭を下げながら明らかに媚を売っているが、見向きもしないルシウス
マルフォイ家ともなるとこういうのは付き物なのだろう
慣れた様子のルシウスやドラコ達にリアンは感心する
「ではごゆっくり
あ、あの、何かあればいつでも仰って下さい」
諦めの悪い男が出て行くのを横目に、リアンはログハウスの中を見渡した
外観とは違う広いログハウスの中は部屋が六つもあり、明らかに空間拡張魔法が掛けられているようだ
ここで三日間過ごさなくてはいけないようだが、快適に過ごせそうだ
階段下の物置きに比べればどこも天国に思えるだろうが…
2017/09/19
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