英雄の兄と落ちこぼれの妹

□誕生日の夜
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「良いのかアレ…」


リドルは不快そうにリアンとレギュラスを見つめていたが、ヴォルは気にした様子もなくワインを飲んでいた


「構わん
それに慣れぬ奴に足を踏まれるのはごめんだ」

「随分な言い草だな
寄生虫風情が偉そうに…」

「若作りしているとはいえ1000歳越えの年寄りには流石にダンスはキツイだろうに…
随分と見栄っ張りなものだな」

「貴様と一緒にするな
ダンスなど造作も無い
貴様こそその中途半端な状態でダンスは出来ないのではないのか?
出来損ないの愚図が意地を張っても滑稽なだけだな」


睨み合うヴォルとサラにどっちもどっちだろうと呆れるリドルは、またリアンへと視線を戻した


「右手を…
そして左手は肩へ添えて、そうです」


レギュラスの言う通りに体勢をとるリアン

そしてゆったりとした音楽が流れ始めるとレギュラスもゆっくりと流れるように動き出す


「パートナーの動きに注目して
それに合わせて動くだけ
リアンは元々運動能力が悪い訳ではないので大丈夫ですよ」


レギュラスの言う通り、彼の動きに合わせて動けばそれはもうダンスそのもの

リアンは少し緊張しながらもレギュラスに身を委ね、流されるように体を動かす


「そう、パートナーに身を委ねて…
お上手ですよ」


下手な知識など無くても完璧にエスコート出来る相手ならば問題は無い

エスコート出来ない男などとは踊る必要は無い

そんな意味も込めてレギュラスはリアンに必要以上に教える事はなかった


「…随分と周到に囲い込むものだな」


二人を見ていたサラはポツリとこぼす

サラの言葉に同意する様にリドルは鼻で嗤う


「執念を感じるね
まぁエスコート出来ない様な愚図と踊らせることなんて無いから
理解は出来るよ」

「…それ抜きにしてもリアンも随分と慣れているな
踊った経験など無いだろうに、良く見て動いている」


ヴォルの言う通り、実際は相手に身を委ねて踊るのは難しいものだ

だがリアンはそれを完璧にこなしている様はさながら熟年夫婦が踊っているのを見ている気分だった

その事に眉を顰めていると、リドルが動き出して彼らに近付いて行くのが見えた

そして流れる様にリアンの手を引いて抱き込むリドルは見下した様にレギュラスを見て鼻で嗤った


「悪いけど返して貰うよ」

思念体風情が…


レギュラスの悪態も物ともせずにリドルはそのままリアンの腰に手を当てた


「僕とも踊ろうよ」

『ぁ、うん』


自分とも難なく踊るリアンに舌を巻きながら、リドルはリアンを見つめて目を細めた


「ほんとリアンって飽きないね
それにしてもダンスだったら左手の印が良く見えるね」


リドルの肩に添えられた左手の甲にある彼の印は側から見れば目立つ

事実、手の甲の印で眉を顰めている三人にリドルは優越感を覚えた


『リドルのは滅多に見れない場所だから少し残念
結構上手く出来たのに』


リアンの言葉に意外そうに目を丸くするリドルだったが、挑発的に笑う


「…言うね
君のそういう所はほんとに好きだな
飽きないし楽しませてくれる」

『リドルのそういう表情豊かで快楽主義な所はぼくも好きだよ』


リドルとヴォルは同じはずなのに似ても似つかない部分がコレに当てはまるだろう

リアンはそう思いながらリドルに身を委ねて足を動かす







2017/09/17

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