英雄の兄と落ちこぼれの妹

□誕生日の夜
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制約魔法を解除した影響で倒れたリアンだったが、休んだおかげで動けるようになり、レギュラスはそんな彼女の誕生日の為に小さなパーティーを計画していた


「これを着て下さいね」


満面の笑みで用意されたドレスは黒のシフォン生地を重ねたもので、胸元にはギャザーがあしらわれていた

縁にはシルバーのケミカルレースがブレードの様に打ち付けられ、黒のラッセルレースが縁取っていた

ドレスと共にジャガード生地のコルセットと、コルセットと合わせてジャガード生地のチョーカー、そしてリアンの細い足を引き立たせる様な編み上げのパンプスを渡されたリアン

それらに着替えたリアンを出迎えたレギュラスはヘアメイクなども丁寧に施し、リアンを驚かせる


『器用だし上手だね』

「ありがとうございます
リアンもとても綺麗ですよ
彼らに見せるのが勿体無いぐらい…
出来ることならこのまま二人で貴方の生まれた日を最後まで過ごしたいです」


熱の籠った瞳で見つめられ、リアンは頬が熱くなるのを感じながら気恥ずかしさで目を泳がせる

そんなリアンの頬に優しく触れるレギュラスもいつもと違う服装で、普段からスーツやキチッとした服装ではあるが、戻って来てからはまた一段と華やかで優美なドレスローブを身に纏っていた

目の肥えたリアンでも直視するのは困難な彼の甘い言葉にリアンはカッと体が熱くなるのを感じた


『れ、ぎゅらす…
でも、クリーチャーさんがせっかくご馳走を作ってくれたんだし…』

「…そうですね
せっかくクリーチャーが頑張ってくれましたし」


小さくフゥ…と溜め息を吐いたレギュラスはリアンににっこりと微笑みながら手を差し伸べた


「ならばせめてこの僕にエスコートさせて頂けますか?」

『…はい』


レギュラスの手に自分の手を重ね、頬を染めながらも微笑むリアンにレギュラスも蕩ける様な甘い笑みを浮かべる

手を引かれ、レギュラスについて行くリアンはまさか自分の誕生日にこんなドレスを着て祝うとは…夢見たことすらなかったが、レギュラスとクリーチャーがリアンの為に計画してくれたんだと思うと嬉しくなった

高鳴る胸を押さえながら、レギュラスが開ける扉を見つめるリアン

開け放たれた扉

扉の向こうには華やかなシャンデリアが吊るされ、優雅な音楽が流れる広い部屋がリアンの目に飛び込んでくる

そしていつもよりも見目麗しい彼ら

普段から浮世離れした美貌の持ち主の彼らだが、着飾れば人間離れした美しさが際立つ

傾国の美人と形容しても間違いではない程のその容姿に、見慣れたはずのリアンもくらりと眩暈を覚えた

美人は三日で飽きるというが、果たして彼らにそれが当てはまるのか…

白銀の髪と白い肌のせいで儚げな雰囲気を持つ綺麗系のサラ

まだまだ幼さを残してはいるものの、正統派イケメンと言える格好いい系のリドル

そしてそんなリドルの幼さを無くし、妖艶さを加えたヴォル

レギュラスも綺麗系だが、サラよりも甘く幼い童顔な彼は美人寄りな可愛い系

それぞれが被ることなく別系統の容姿を持つ彼らが揃えばまさしく傾国の美人という言葉通り、国や世界は危ういかもしれない


『…もうその顔で魔法界なんとか出来るんじゃないのかな』

「…いきなり何を言い出すんだ貴様は」

『“傾国の美人”ってヴォル達の為の言葉だと思う』


そう呟いたリアンを鼻で笑うヴォルだったが、満更でもないらしい


「そんな事よりもリアン、ささやかなものではありますが誕生日パーティーを致しましょう」


レギュラスがそう言ってご馳走を並べるテーブルへとリアンを案内する

そこにはクリーチャーが給仕の為に立っており、リアンとレギュラスを見て深々とお辞儀をする


「お嬢様、お誕生日おめでとうございます
今宵は心ゆくまでお楽しみ下さいませ」

『ありがとう、クリーチャーさん
とっても嬉しい』


そう言ってはにかむリアンにクリーチャーも嬉しそうに耳をパタパタさせながらも飲み物を渡して給仕の仕事を全うする

ご馳走とデザートをお腹いっぱい食べたリアン

そして食事もひと段落ついた頃、レギュラスはリアンの手を取り微笑んだ


「この僕と踊って頂けませんか?」

『踊り…したことなくて…』

「大丈夫です
今年はホグワーツでダンスパーティーがあるのだとか
教えて差し上げますので予行演習だと思って…」


そう言って手を引かれたリアンはレギュラスのエスコートと指導の元で踊ることになった







2017/09/16

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