英雄の兄と落ちこぼれの妹

□不満と嫉妬
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「…デザイン決めれないなら一緒のにしようよ
お揃いになるし」

『えっと…蛇と薔薇、あと蝶だっけ?』

「そうだよ
蝶は愛と美と再生の象徴
蛇は無限と再生、知恵の象徴
薔薇は色や本数で意味が変わる」


赤は情熱、白は純潔という風に色によって花言葉が変わる薔薇

しかもツルバラはリアンの誕生花でもあるのだ


「青と黒、そして赤い蕾がいいね」

『青色は神の祝福、奇跡、神秘的だったよね
黒色と蕾って何か意味があるの?』

「青は夢叶う、不可能を成し遂げる、一目惚れっていう意味もあるよ
黒薔薇は貴方はあくまで私のもの、憎しみ、恨み、決して滅びることのない愛、永遠の愛って意味を持ってる
赤い蕾は純潔、あなたに尽くします、純粋な愛、愛の告白、若さと美しさだったね」


黒薔薇の意味に顔を引き攣らせそうになったリアンだったがなんとか留まり、男であるリドルが花言葉やその意味を知るその博識さを褒めた


『…よく知ってるね』

「知識はあって困る事はないからね
ほら、まずは君がやって
蝶は別に僕には要らないから蛇と薔薇だけね
ちゃんと想像力を働かせるんだよ」


そう言われて杖を渡されるリアン

だがどこにつけるんだとリドルに尋ねようと顔を上げた瞬間、リアンは顔を真っ赤にして勢いよく顔を背けた


「何してるの?」

『こ、ここ、こっちのせりふっ!!』


ネクタイを解いてカッターシャツのボタンを外すリドルにリアンはテンパりながらも声を上げた

白い肌に首筋や鎖骨が浮き出る首元にリアンは恥ずかしくなった


「あぁ…ハリーや僕らがずっと一緒に居るのに男慣れしてないんだ
可愛い」


クスクスと笑みをこぼすリドルを恨めしく見るが、普段はきっちり着込まれている制服が着崩されているというギャップにリアンはまた赤面して目を反らした


「ほら、ここ
ちゃんと見て」


そう言って手を掴まれて杖先を左の鎖骨に

そして顎を掴まれて顔を合わすように固定される


『ほ、んとに…やるの?』

「はやく…」


震えそうになるのを我慢してリアンは教えられた魔法を発動させた

リドルはリアンの杖先が触れる部分に熱とジワジワと炙られるような痛みを感じた

だがそれを顔に出せばリアンの手が止まるとわかっているので眉一つ動かす事なくジッとリアンを見つめた


『痛くない?』

「別に
それよりリアンにはどこにつけようか」


お揃いならば同じ鎖骨部分なのだが、そこじゃ左手首にある獅子座のように見えない

いっその事、首輪のように首に刻み込みたい衝動に駆られるリドル

だがその衝動を遮るようにジリジリとした鈍い痛みが走る


『こんな感じ、かな?』

「うん
よく出来てる」


持っていた小さな手鏡で付けた印をリドルに見せるリアン

鏡に映る自分の肌に浮かぶ薔薇と薔薇の蔓に絡まれた蛇

この魔法は使った本人の想像力によってデザインが大きく変わる

そのせいかリドルに刻まれた蛇はバジリスクだった

リアンの中での蛇はバジリスクが印象が強いのだろう

少しおかしく思いながらも満足する出来とレギュラスより先に与えられたという優越感にリドルは笑みを浮かべた


「杖を貸して
次は僕の番だよ」


杖を受け取ったリドルはリアンの左手を取った

そして手の甲に杖先を向けるリドルにリアンは戸惑った様に彼を見上げる


「君の杖腕、利き腕の一番見える手の甲
キスとしては敬愛だったね」


ジリッ…と熱と疼く様な感覚

そして侵食されていく様な

何かが入り込んで来る様な

そんな感覚がリアンの左手を支配する


『りど、る…』

「この僕が唯一、尊敬と親しみを持ち
そして僕が唯一、愛した女性…」


そう言ってリアンの手の甲に刻み込まれた印に唇を落とすリドル

青い薔薇に絡み付く蛇と蝶がくっきりと浮かび上がる手の甲にリアンは学校で目立つな…とぼんやり思った


「リアン自身も愛情が理解出来ないのは分かってる
でもこれ以上、他の誰かを魅了するのは許さないよ
もしまた誰かを引っ掛けて来たら…」


手の甲に触れた唇が今度はリアンの唇にそっと触れる

少し冷たいリドルの唇にリアンは自身の体が熱を持っている事に気付く

それと同時にスルリと潜り込んでくるリドルのひんやりとした舌がリアンの舌に絡み付き、擦り合わされる


『んん…』


舌を吸い上げられ、チュルっと唇で愛撫するかの様に挟まれ、そのまま離される

ペロリと扇情的に唇を舐めあげるリドルにリアンは息を弾ませながらゆるりと見上げる


「もしまた誰かを引っ掛けてきたら
今以上の事するから」


そう言ってリドルはリアンの内ポケットに杖を戻してスッとリアンから離れた


「あいつにクィディッチのワールドカップの事聞くんだろう?
はやく行こう」

『…うん』


何か言ってやろうと思っていたリアンだったが、結局リドルに差し伸べられた手を大人しく取る

上機嫌に戻ったリドルを横目に、とりあえず引っ掛けた覚えはないと言い返したかったが、その言葉を口にする事はなく、リアンは大人しく手を引かれる

そして目に映る手の甲に刻み込まれたリドルの印

ドクンと脈打つその印にどんな効力があるかリアンには分からない

だがリドルとお揃いのその印にリアンは密かに口角を吊り上げたのだった







2017/09/10

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