英雄の兄と落ちこぼれの妹

□不満と嫉妬
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『ドラコからの手紙だ』


ドラコのペットであるワシミミズクから手紙を受け取ったリアンは嬉しそうに手紙を開ける

クリーチャーが水や食べ物をワシミミズクに与えるのを横目に、ドラコの手紙を見てリアンは穏やかに微笑んだ


「どうかした?」

『前に送ったやつの返事だよ
夏休み入ってすぐにマルフォイ邸に誘われたんだけど、レギュラスとの約束があったしね
だから誕生日過ぎるぐらいまでは待って欲しいって手紙に書いたの』


後ろから抱き付いてくるリドルに答えながら、腕の中で手紙を読み進めるリアンにリドルも肩から手紙を覗き見る


「クィディッチのワールドカップがあるんだね」

『知らなかった…
良い席のチケットを手に入れたって
ドラコったらわざわざ誘ってくれるなんて本当に優しいよね』


8月にあるクィディッチのワールドカップに一緒に行かないかというドラコの誘いにリアンは頬を緩めた


『クィディッチはあんまり興味無いけど…
でもワールドカップは見てみたいな』

「…そうだね」


クィディッチだけではなく、ハリーに通づるものは全て忌避してきたリアンだったが、ドラコがクィディッチ好きでスリザリンのシーカーをしていることからクィディッチ自体を嫌いというわけではないのだ

やりたいとは思わないようだが…


『ヴォル達に聞いてから返事を書くから少し待っててね』


リアンはドラコのワシミミズクを一撫でしてからその場を離れた

リドルもリアンの後について行きながら、上機嫌なリアンの顔を覗き込む


「嬉しそうだね」

『うん、今年の夏休みはすっごく楽しいからね
それにクリーチャーが誕生日にご馳走作ってくれるって!
それに誕生日が終わればドラコが誘ってくれたワールドカップにも行けるかもしれない
楽しみがいっぱい』


ニコニコと上機嫌に微笑むリアンに対してリドルは無表情で明らかに不機嫌さが増していく

それに気付いたリアンが彼を見上げる

だが声をかける前にリドルの手がリアンの肩を掴み、そのまま壁へと押し付けた

決して強い力ではなかった

その為、リアンは痛みを感じる事はなかったが、驚愕のあまりに呆然とリドルを見上げていた


『り…ど、る?』

「この僕の想いを無視して君はあの男やドラコの事ばかり…
いい加減にしてくれないかい?」


ギラギラと光る真紅の瞳にリアンはその目を見開いた

リドルは二年生の時、日記帳のページとインクから復活した日にリアンに“愛してる”と告白した

だがそれ以降はその事を口にする事はなかった

一年以上経ってもリアンが応えることをしなかったからだ

リドルは分かっていた

自分と同じく両親が居ないリアンには愛情が分からない

ましてや唯一の肉親であるハリーから向けられたものはとても愛と呼べるような綺麗なものではなかった

母親からの守護魔法もない

だから仕方のない事だった

リドル自身もリアンと出会うまで愛など信じていなかった

だからその事に関してリアンを責める気はなかった

だが…


「君の体にこんなものを残す事を許すなんて…」


苛立ちに任せて乱暴にリアンの左腕を掴むリドル

その左腕の手首にはレギュラスが刻んだ獅子座の紋様がハッキリと白い肌に浮かんでいた


「君はいったいどうしたいんだい?
僕に愛なんてものを抱かせ、嫉妬させて…
愛してるって僕が最初に言ったのに君は…」


苦しそうな表情のリドルにリアンは言葉が出なかった

けれども自分がした事に気付き、気まずそうに目を伏せる


「…レギュラスの闇の印を消してリアンが与えるんだろう?」


レギュラスと再開した直後の約束を口にするリドルにリアンは意図が読めず、彼の表情を伺おうと見上げると目を細めて笑っているのが見えた


「じゃあ…先に僕にちょうだい
君にも…こんなのよりもずっといいのをあげるから」


そう言ってリドルはリアンの杖を勝手に内ポケットから取り出た


「やり方は知ってるだろう?」

『で、でも…』

「デザインは蛇がいいな
リアンには蛇と薔薇、蝶もつけようか」


杖先で首筋や胸元をなぞられ、リアンは顔が赤くなるのを感じた

自分が悪いことは分かってる

だからリドルの怒りは理解出来るし受け入れるつもりだ

だけど…


『ちゃんと考えたいんだ…
だけどこういうのよくわからなくって…
愛とか恋とか
それにこういうデザインとかも…』

「…ここで普通デザインの話持ってくる?」


深く溜め息を吐くリドル

興が削がれたが印を刻むのは諦めていないようで、どこに刻み込もうかとリアンを見下ろしていた







2017/09/09

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