英雄の兄と落ちこぼれの妹

□要求
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『アクシオ、ヴォル』


決意を固めたリアンがまずしたことは、ヴォルを呼び寄せ呪文で捕まえることだった


「猫に呼び寄せ呪文を掛ける奴があるか!?」

『だってどこにいるか分からなかったんだもん
それにこうやって見つかったんだから良いでしょ?』

「良いわけあるかっ!!」


呼び寄せ呪文は成功してヴォルは無事にリアンの腕の中に収まったが、ヴォルは大変ご立腹な様子でリアンは困った様に眉を下げた


「わざわざ呼び寄せ呪文まで使って…
何の用だ?」

『リドルも一緒に話がしたいの
だから出てきて欲しいんだけど…』


どうしたらいい?と尋ねるリアンの背後にリドルが既に現れているのに気付いたヴォルは、吐き捨てる様に振り返ってみろと言い放つ


「おねだりするならそんな爺猫じゃなく僕にして欲しいんだけど」


拗ねたような、不機嫌な表情で見下ろしてくるリドルにリアンは笑顔を浮かべた


『おねだりは今からするから
というか、交換条件とも言えるかな?』


リアンはそう言ってヴォルをソファーに下ろし、リドルもその隣に座るように促した

自分はレギュラスと一緒にヴォル達の向かい側に座り、そして真っ直ぐヴォルとリドルを見つめた


『昨日言われたことを色々考えた
覚悟が足りないんだって分かった
リーマスの答えを聞いて、自分でも考えて
そして答えを出した
二人にはぼくの答えを聞いて欲しい』


迷いのないリアンの眼差しにヴォルとリドルはジッとリアンを見つめ返して

話を聞いてくれる様子の二人にリアンは小さく深呼吸をして自分の考えを述べる


『どう考えてもぼくにはダンブルドアやハリーを仲間だと、味方だと思えないしなれない
それはヴォルとか関係無く、自分で考えてそう判断した』


その事に関してはヴォルもリドルも予想していた

幾ら優しいリアンでも、彼らの行いを考えればそれも当然の結果だろう


『ヴォルデモート卿や闇の陣営の行いや思想に関してだけど…
ぼくは自分の大切な者以外のことはどうでもいいから判断出来ない
ただ純血主義に関しては色々思わないでもない』


歴史上のマグルの行いや魔法族の迫害を考えれば純血主義は仕方のない事だとリアンは思っていた

それぞれの考え方があり、思想がある

だからリアン自身は純血主義に関してはあまり口出しする気は無かった


『純粋な疑問なんだけれども…
マグルやマグル生まれの魔法族を殲滅して遺伝子学的に大丈夫なのかなって…』


血が近過ぎる、もしくは濃過ぎると精神面か肉体面のどちらかに異常が見られる事がある

極端に短命だったり、障がいを持っていたり、奇形だったり

生殖異常が出たらそれこそ致命的と言える

精神疾患だったり奇行を繰り返す人間ばかり生まれてしまうこともあるという


『今は良くても、将来的に魔法族が絶滅してしまいかねない
そうじゃなくても、蛇と話す事が出来るパーセルマウスや杖や魔法無しで変化出来る七変化もそうだけど
魔法も本当は突然変異か何かで、マグルの中から生まれた能力だと思うの
魔力は優性遺伝っていうのは証明されていたはず
ならマグルは劣性遺伝という事になる
純血一族の中でもスクイブが生まれるのは祖先がマグルだからじゃないかな』


本で読んで齧った程度の遺伝学の話なんだけどねと言ったリアンだったが、ヴォルもリドルもリアンの話をスッと呑み込んで納得する事が出来た


『だから何が言いたいかっていうと、そこまで純血に拘るのもどうかなって
マグルを敵視するにしてもさ、きっとマグルだって必要だから存在するんだよ
必要の無い物は自然と滅びる
わざわざそれをヴォルの手で行わなくてもね』


これがリアンの中での純血主義への考えだった


『でも結局のところぼくは純血じゃないから分かんないけどね
だから科学的根拠に基づく事実を述べるだけ
この場合、遺伝学や近親婚の危険性だね
別に十年二十年は大丈夫だろうけれど、これが五十年後や百年後になったらどうなるかなって話
だからあなた達のやる事に協力や賛同はあまりしないと思う
奇形児や障がい児を自らの手で増やしたいとは思わないからね』


ヴォルとリドルのリアンの話を聞いて思い出すのが自分の血族の事だった

ゴーント家はいとこ同士で結婚する風習があった

リアンの言う通りならば血が濃過ぎたのだろう

何世紀にも渡って情緒不安定と暴力の血筋で知られていたゴーント家は遺伝性の精神疾患を患っていたのだろう

そう考えると今は良くてもいずれは数の少ない純血一族の血は濃くなり、最後には…







2017/08/30

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