英雄の兄と落ちこぼれの妹

□叶わぬ願い
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リトル・ハングルトンからレギュラスの屋敷ったリアン達をブラック家の屋敷しもべ妖精のクリーチャーが出迎える


「お帰りなさいませ坊っちゃま、お嬢様」

「ただいまクリーチャー
変わりはなかったかい?」

「お嬢様宛にリーマス・ルーピン様からお手紙が来ておりました」


そう言って差し出された手紙を受け取ったリアンは少し複雑そうな表情で封筒に書かれたルーピンの名前を見つめていた


「君のご両親の友人で、去年の闇の魔術に対する防衛術の教師…ですよね?」

『うん…』


リアンはルーピンとの最後を思い出して手紙を読むのが気が重かった

だが億劫ながらも手紙を開く

中身は話がしたいから家に来て欲しいとの内容が書かれていた


『…』

《あの狼男の中で答えが出たようだな》


聞きたくないと思ってしまう

もし彼がダンブルドアを選べば…

だがそれと同時にもし彼が別を選択をしたなら、聞いてみたいとも思えた


『ルーピン先生はどっちを選んだんだろうね』

「それを聞くのだろう?」

『うん、そうだね…』


覚悟を決めたリアンは明日訪ねるとだけ書いた短い手紙を、ルーピンが送って来たフクロウに持たせた

飛び去るフクロウを見送り、リアンは小さく溜め息を吐く


『ルーピン先生も思えば可哀想だね
あのまま恩師を信じていれば苦しまなくて済んだだろうに…
恩師か親友の遺した子供か
そんな事選びたくないだろうに…』


選ばせてしまった

そしてそれはルーピンだけでなくスネイプに対しても言える事だった


『知らなければ幸せだったのかもしれないのに…』


影を落とすリアンにそれぞれは思う

どれだけ絶望に陥ってもこの子の心は変わらない

優しく

純粋で

あたたかいままだ


「リアン」


美しい深紅と翠の瞳に情けない猫の姿が映し出される


「あの狸爺はおそらく愚兄とお前に俺様の魂が移された事を知っている」


そしてそれを知った奴の行動は容易に予想出来る


「あいつは愚兄とお前を殺すつもりだっただろう
正義の名の下にな」


驚きに目を見開くリアン

そして意味を理解して震える手をリドルが握った


「お前がセブルスやあの狼男に何も言わなくてもいずれ知れ渡ることになっていた
ダンブルドアの冷酷な顔を…」


だから気に病むことはない

心を傷めることはない


「むしろ教えてやった方が良かったんだ
あいつは目的のために手段を選ばん上にグリフィンドール以外の者を受け入れない
セブルスは死んでもおかしくない事を押し付けられるだろう
シリウス・ブラックもアズカバンから助け出さなかったのは何か理由があったはずだ
利用されていたのかもしれん」

『どうして…
シリウス・ブラックはグリフィンドールなのに…』

「それがダンブルドアだ
おそらく自分に知らせずに秘密の守人を変えた事が関係してるかもしれん」


どうしてと小さく呟くリアンをヴォルはジッと見つめる

酷な事かもしれない

だがこれから先はもっと残酷な現実が待っている

だから…


「お前はそろそろ決めなくてはいけないだろう
誰を敵として、誰を味方とするか
決めたらもう後戻りは出来ない
覚悟を決めろ
情けは掛けるな
甘い考えでダンブルドアを相手には出来んぞ」


ダンブルドアやハリーを敵として見なすのならば…

一々心を痛めていたらキリがない

あの狸爺はそんなに甘くはない


『ぼくは…』

「そいつの答えを聞くのだろう?
そいつの答えを聞いてよく考えろ」


瞳を揺らすリアン

あとは自分で答えを出さなくてはいけない

もっと早くこうするべきだった

だが…


「…俺様も甘くなったもんだ」


あの子のあんな顔が見たくないからと…

そんな理由で甘やかしてきた自分にヴォルは嘲笑しながら一人で考えさせようとリアンから離れた







2017/08/26

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