英雄の兄と落ちこぼれの妹

□分霊箱-ホークラックス-
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分霊箱(ホークラックス)?』

「不死となるために魂の一部を物に閉じ込める魔法だ」

「そこの糞猫が良い例だ
分霊箱に納められた魂の断片は魂をこの世に繋ぎとめる役割を持つ
本来の肉体と肉体に宿る魂が破壊されても、他の魂の断片を納めた分霊箱が存在する限りは本当の意味で死んだ事にはならない
そのお陰でそこの寄生虫はしぶとく生きているんだ」


日記のページを入れたロケットとサラの物だったロケットを手に持つリアンにヴォルは簡単にホークラックスについて教えていた

そこへサラがヴォルを見下しながら補足する


「他者を殺害すると自分の魂が引き裂かれることを利用して作られた古の魔法だ
故に分霊箱を作成する際には生け贄として他者を魔法で殺害する必要があるのだが、そこの糞猫の様に何度も殺している者は魂が非常に不安定な状態になっているのだ
だから本人が気付かないうちに魂が引き裂かれ、意図せずに分霊箱が作成されることがある」


それがリアンとハリーだと言ったサラにヴォル自身も驚きの表情を見せた

あの夜、ヴォルが気付かない内にリアンとハリーにヴォルの魂が入り込んだらしい


「そしてここにあるのが愚兄に引っかかっていた糞猫の魂だ」


そう言ってサラは魔力を封じるガラス玉を取り出した

中には銀色のキラキラしたものが入っていた


「あの愚兄が間抜けにも腹を出して寝ている時に拝借してきた
リアンの分はこれから…」

『それはいいよ
分霊箱は他にもあるんでしょう?』


リアンはサラからガラス玉を受け取りながら自分の分はこのままで良いと言った


『ヴォルの魂ってとっても綺麗だね』


ガラス玉の中にあるヴォルの魂の一部がいたく気に入ったのか、リアンはそのガラス玉を魅入られた様にうっとりと見つめていた

そんなリアンにサラとレギュラスは不機嫌になり、不機嫌だったリドルは上機嫌になった


『ほかの分霊箱はどこにあるの?』

「…リトル・ハングルトン」

『じゃあ早速そこに行かなくちゃね
今日はもう遅いから明日一緒に行こうか』


リアンは巾着にリドルのロケットとサラのロケット、そしてガラス玉を入れた


「夕食にはまだ早いですね
夏休みの宿題の進捗は如何ですか?」

『もう全部終わってるよ』

「では印の勉強を致しましょう
早くこんな糞ダサい印なんて消してしまいたいですし」

「…貴様、この16年の間に何があった
性格が違い過ぎるだろう」


リアンに杖を持ってくる様に言ったレギュラス

そしてレギュラスはヴォルを鼻で笑い飛ばした


「あなたがバカにしていた愛ですよ
理解出来ないとは思いますが
でもその愛にあなたは力を奪われ、失脚に追い込まれた
そして僕もその愛で16年間あなたから身を隠し、息を潜めて13年前に周りから糾弾されながらもブラック家を建て直した
その愛だけで…僕はここに居る」


湖の中で伸ばした手を取り、触れ合ったあの瞬間から

水の中で貴重な空気を分け与えてくれたあの瞬間から

生きている意味があると言ってくれたあの瞬間から

僕は彼女に心奪われたんだ


「僕は彼女に命を貰い、同時に心を奪われた
僕がここまでやれたのは彼女との再会の約束のため
彼女を想い、焦がれ続けた事が力となった
あなたが卑下していた愛が僕をここまで強くしてくれた」


元々闇に近いブラック家

死喰い人も何人も居た

だがそれらを交わし、かつて栄華を極めた時に比べれば劣っているが、それなりの力を取り戻した

シリウスの事があってブラック家は疑われて監視されていたが、今はもう自由に動けるようになった

クリーチャーが居れどもたった一人でここまで来たレギュラスを何がそこまで駆り立てたのか…


「あなたは聞きましたね
何があったのかと…
彼女に出会った
彼女に心奪われた
それだけですよ」


レギュラスの言葉にヴォルは否応無しに考えさせられた

自分には決して与えられなかった愛

愛が全てと言う癖に与えてはくれなかったダンブルドアを見返そうと

自分には与えて貰えなかったという劣等感を感じないようにと愛を否定してきた

だがその愛に敗れて力が奪われ、か弱い下等生物を依り代にしなくてはならない程追い詰められた

それでも愛が全てだとは思いたくなくて

復活を図ろうとリアンを利用した

自分と同じように愛を与えて貰えなかったリアン

けれどもリアンは自分とは違っていた

どこまでも優しく

そしてあたたかかった

その優しさやぬくもりに正体が分からぬ蛇野郎と自分の記憶が惹かれていくのを見ていた

けれども自分は決してそうはならないと思っていた

だがいつしかその優しさやぬくもりが心地良く感じ、リアンの憂いを取り除こうと動くようになった

リアンを想い、気を掛けて

いつしか…


『ヴォル?』


杖を取りに行って戻るとジッと考え込んでいるヴォルを見つけてリアンは声を掛ける

顔を上げたヴォルは何かを迷っているようで

困惑しているようで

そしてとても不安気に見えた

だから不安を感じさせないように努めて優しく声をかけた


『ヴォル、教えてくれる?』

「…あぁ」


ふわりと浮かんだ笑顔に

ヴォルの心は動き出す

その変化がどう影響するか

まだ誰にも分からない







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2017/08/25
*あとがき
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