英雄の兄と落ちこぼれの妹

□幸せな未来
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『エクスペクト・パトローナム』


呪文を唱えるとリアンの杖先に白銀の靄が現れた

それを見てサラは頷く


《初めてにしては上出来だ》


サラの言葉にリアンは笑みをこぼす

リアンは自室で魔力の制御と共に守護霊の呪文を教わっていた

ふわふわと漂う白銀の靄はすぐに飛散したが、一発で形なくとも呪文が成功したリアンにサラは喜んでいた


《それにしても何を思い浮かべたんだ?》

『ヴォルやサラ、リドルとの生活』


なんでもないかのように言い放ったリアンだったが、ヴォルやサラは驚き、リドルは感極まったかのようにリアンに抱き付く


「リアン…反則だ」

『な、何が?』

「リアンズルい」

『リドル?』


ぎゅーぎゅーと遠慮なく抱き付いてくるリドルにリアンは苦しく思いながらも大人しく抱かれる

そしてもう一度呪文を唱えれば、それはハッキリとした形となった


「やはり蛇か…」


リアンよりも大きな大蛇となった守護霊にヴォルは目を細めた


『ヴォル達と穏やかに暮らす想像をしたんだ
湖があって、植物もいっぱいあって綺麗な所
みんなとお茶会をする想像…』


リドルの腕の中から守護霊に手を伸ばしたリアン

擦り寄ってくる大蛇はどこか暖かく、幸せな気分になった


『いつか叶えたいな…
それまでにいっぱい勉強してお金稼がなくちゃね』


クスクスと笑みをこぼすリアンにサラはフッと笑う


《私の資産を与えよう
どうせ誰も使わんしな》

『え?』

《夏休み頃からバジに頼んで居たんだ
私の屋敷を探すようにと…
千年経った今でも残っていたようでな
当時はグリンゴッツなんていう便利な所は無かったから屋敷に資産を置いていたんだ》


通貨は変わらんから問題ないだろうと言うサラに驚き過ぎて反応出来ないリアン

だがサラは気にせず夏休みに案内するとだけ言うと人型に戻って紅茶を淹れる


「貴様…千年前の人間だったのか?」

「フン…貴様に関係ないだろう糞猫」


怪訝そうな表情のヴォルを無視するサラ

だがサラの正体を知るリドルは彼の資産がどんなものか考えつかず、眉をひそめていた


「…まぁ貰えるものは貰っておけば良いんじゃない?
どうせポッター夫妻の資産なんて君自身の分はあってないようなものだし、マルフォイ家の財産もドラコの物だ
金はあって困るものじゃないしね」


リドルの言葉に渋々納得するリアンはそれ以上気にしても仕方ないと切り替えてサラの淹れた紅茶を飲む


「守護霊の呪文は出来たが、やはりまだ魔力のコントロールがな…
強大な魔力というのも考えものだな」

「術が成功しないわけではないんだ
問題ないだろう
ただ精密で繊細な変身術には手こずるかもしれん
いっその事、魔力を何かで発散させたらどうだ?」


ヴォルやサラ、リドルに魔力を分け与えるリアン

それでも魔力が枯渇する様子はない

強大過ぎるからコントロール出来ないのならもっと発散してコントロール出来る程度にまで魔力を消費すればいい

ヴォルの言葉にサラは何か思いついたのか、少し出てくると部屋を出て行った


「…あいつ何者なんだ?」


小さく呟くヴォルにリアンの隣に居たリドルはリアンにしか聞こえないように呟く


「ここまで気付かないなんて…耄碌爺」







2017/08/19

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