英雄の兄と落ちこぼれの妹
□敵か味方か
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吸魂鬼がどこかへ消えて少しすると、汽車はまた動き始めた
落ち着いたリアンは制服に着替え、戻ってきたドラコとお喋りしながら過ごした
十分後、汽車はホグズミード駅に停車した
一年生以外は馬車に乗ってホグワーツに向かう生徒達
リアンは鋳鉄の門の両脇に警護している吸魂鬼を見て目を見開いた
《やはりホグワーツの周りに吸魂鬼を放っているのか》
サラの呟きにリアンは門の両脇に佇む吸魂鬼を一瞥した
何故ここまで…
気になることは沢山あるが、周りに人が居る以上容易に相談は出来ない
リアンはホグワーツの城の中に早く行きたいと思いながら、ゆっくりと進む馬車に揺られた
大広間の天井は今日の天気同様、黒い雲に覆われていた
だがホグワーツに帰ってきたという事実の前では対したことではなかった
ドラコと共にスリザリンのテーブルの座るリアン
ふとグリフィンドールのテーブルにハリーが居ないことに気付いた
ハリーだけではない
ハーマイオニーも居ないのだ
いつも一緒にいるロンは一人でテーブルに座っていた
その事に疑問を抱くリアンだったが、新入生の組み分けが始まると同時に疑問も掻き消された
組み分けが終わった頃、ハリーとハーマイオニーが大広間にやって来る
マクゴナガルも居なかった為、三人は一緒だったのだろう
コソコソと周りが何か言っているが、内容を気にする前にダンブルドアが立ち上がった為、そちらに意識が行った
にっこりと笑いかけるダンブルドアにリアンは無表情を貫くが、その手は固く握り締められていた
「新学期おめでとう!
皆に幾つかお知らせがある
一つはとても深刻な問題じゃから、皆がご馳走でボーッとなる前に片付けてしまう方がよかろうの…」
おそらく吸魂鬼の事だろう
リアンはそう思いつつも咳払いしてから言葉を続けるダンブルドアを見る
「ホグワーツ特急での調査があったから皆も知っての通り、我が校はただいまアズカバンの吸魂鬼を受け入れておる
魔法省のご用でここに来ておるのじゃ」
ダンブルドアの表情を見るに、ダンブルドアは吸魂鬼が学校を警備することを快く思っていないのだろう
だがそれさえも受け入れなければならない事態が今、ホグワーツにまで手を伸ばしていたのだ
「吸魂鬼達は学校への入り口という入り口を固めておる
あの者たちが此処にいる限り、はっきり言うておくが誰も許可なしで学校を離れてはならんぞ
吸魂鬼はいたずらや変装に引っ掛かるようなシロモノではない
“透明マント”でさえ無駄じゃ」
ダンブルドアがさらりと付け加えた言葉にリアンは思わずハリーを見た
ハリーの持つ透明マントをダンブルドアは知っている
今年はダンブルドアもハリーを自由には出来ない事態にまで陥っているのだろう
「言い訳やお願いを聞いてもらおうとしても、吸魂鬼には生来できない相談じゃ
それじゃから、一人一人に注意しておく
あの者達が皆に危害を加えるような口実を与えるではないぞ
監督生よ、男子、女子それぞれの新任の首席よ、頼みましたぞ
誰一人として吸魂鬼といざこざを起こすことのないよう気をつけるのじゃぞ」
ダンブルドアは真剣な面持ちで大広間をぐるりと見渡した
誰一人身動きせず、声を出す者のいなかった
そんな生徒達にダンブルドアは楽しい話に移ろうと言った
「今学期から嬉しいことに新任の先生を二人お迎えすることになった
まず、リーマス・J・ルーピン先生
ありがたいことに、空席になっている闇の魔術に対する防衛術の担当をお引き受けくださった」
そう言ってダンブルドアの紹介と共に教職員席に座っていたルーピンが立ち上がり、軽い会釈をした
彼は一張羅を着込んだ先生方の間で、一層見窄らしく貧相に見えた
そのためか、生徒達の拍手はパラパラちあまり気のない拍手だったが、ハリー達三人は大きな拍手をして居た為、リアンは首を傾げた
拍手が止むのを見計らってダンブルドアは話を再開した
「さて、もう一人の先生は
ケルトバーン先生は“魔法生物飼育学”の先生じゃったが、残念ながら前年度末をもって退職なさることになった
手足が一本でも残っている内に余生を楽しまれたいとのことじゃ
そこで後任じゃが、嬉しい事にルビウス・ハグリッドが現職の森番役に加えて教鞭を取ってくださることになった」
ダンブルドアの言葉にスリザリンの生徒達は凍りつき、反対にグリフィンドールの生徒達は割れんばかりの拍手を送った
『平気で法律を破ってドラゴンを飼おうとしたりするハグリットを教師に?』
「…あの狸爺正気か?」
拍手に埋もれるリアンの声を拾ったヴォルがダンブルドアを睨みつけながら呟いた
リアンは“魔法生物飼育学”を選択した事を後悔したのだった
2015/10/24
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