英雄の兄と落ちこぼれの妹

□吸魂鬼
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残りの夏休みはヴォルやサラとの三年生の予習復習三昧だった

すでにO.W.L試験範囲は終わっており、七年生やN.E.W.T試験範囲にも齧っていた

なので三年生の授業内容はすでに終わっては居るが、ヴォルもサラも主席を取らなければキツイお仕置きを受けさせると目をギラつかせる

そんな二人にリアンは予習復習を欠かさなかった

勿論、ドラコやナルシッサと共にお茶会を楽しんだりもした

ルシウスはあれからリアンに接触はしては来なかったが、時折纏わりつくような視線を送ってきた

リアンはそんなルシウスの視線を無視し続け、とうとうやってきた9月1日

リアンとマルフォイ一家はキングズ・クロス駅へ来ていた

空いているコンパートメントにドラコと共に入ったリアン

窓から別れを惜しむナルシッサを横目にリアンはルシウスを見る


『屋敷に置いていただいて感謝します
大変お世話になって、なんとお礼を言ったら良いか…』

「気にする事はないさ
それよりも…」


養子の件について聞きたいのだろうルシウスにリアンは目を伏せた


『年明け頃にはお返事させて頂きます
必ず…』


リアンの言葉にルシウスは何も言わなかった

そしてとうとうホグワーツ特急が発車した

問題無くホグワーツ特急は進むが生憎の天気で、昼頃には窓の外の丘陵風景が霞む程の雨が降り出していた

ドラコはクラッブとゴイルがコンパートメントにやって来ると何処かへ行ってしまった

それ幸いとサラは人型になり、リドルもロケットから姿を現した


『少し肌寒くなってきたね』


リアンは去年のクリスマスにスネイプから貰った緑のチェックの膝掛けを肩に掛けながら窓の外を見た

真っ暗な空にリアンは背筋が震えて嫌な予感がした

その時だった

汽車が速度を落とし始めたのだ


「おかしいね
ホグワーツにはまだ着かない筈だけど」


リドルの言葉にリアンも同意した

なんだかおかしい

とうとう汽車はガクンと止まり、なんの前触れもなく明かりが一斉に消えた


「リアン
杖を出せ」


ヴォルがリアンの肩に乗って言った

リアンはヴォルの言う通り、杖を出してコンパートメントの扉に向けた


『いったい何が起きて…』


そこでリアンは窓ガラスがパキパキと音を立てて凍り始めたのに気付いた


『窓が…』

「静かに…
ルーモス」


サラがリアンの背後に立ってヴォルがいる肩とは反対の肩を掴んだ

もう片方の腕は杖を構えるリアンの手に重ね、明かりを灯した

ぼんやりと明るくなるコンパートメント

だがコンパートメントの外に真っ暗な靄が見えた


「面倒な奴が来た…」


リドルの呟きにリアンは緊張が走る

次の瞬間、コンパートメントのドアがゆっくりと開いた

入り口に立っていたのはマントを来た黒い影だった

コンパートメントの外に見えていた靄は影のマントだったのだ

リアンはその影に見覚えがあった


吸魂鬼(ディメンター)…』


アズカバンの看守であり、地上を歩く生物の中で最も忌まわしきものの1つと言われている

人間の心から発せられる幸福・歓喜などの感情を感知し、それを吸い取って自身の糧とする

リアンは本の知識が頭に浮かぶが、実物を見るのは勿論初めてだった

何故アズカバンの看守がここに…

もしかして…

シリウス・ブラックを探して…


「今すぐ立ち去れ吸魂鬼よ
貴様らの探している者はここには居ない」


サラの言葉に吸魂鬼はコンパートメントに入ってくるのを止めた


「去れ
さもなくば、貴様を今すぐ消しても私は構わんぞ」


サラの言葉に吸魂鬼はコンパートメントから出て何処かへ消えた

リアンは急に力が抜けてその場に座り込んだ


「大丈夫か?」


ヴォルが声を掛けてくるが、リアンはそれよりも全身を襲う寒気に体を震わせていた


「甘いものを食べるといい」


そう言ってリドルがリアンの鞄の中からお菓子を取り出してリアンの口に入れた

口に広がる甘さにリアンは体の体温が戻ってきたような気がした

落ち着いたリアンは座席に座る


『今のって…
アズカバンの看守の吸魂鬼だよね…』

「あぁ
大方シリウス・ブラックを追ってやって来たのだろう」


リアンの言葉にヴォルが返す

サラは蛇に戻ってリアンの首に巻き付いた


《今年も面倒な事になりそうだな
この様子じゃあホグワーツにも吸魂鬼が張り付くかもしれん
リアン
守護霊の呪文を覚える必要がありそうだな》


サラの言葉にリアンはサラの紅い瞳を見つめた


「吸魂鬼を追い払う唯一の手段と言っても過言ではない魔法だね
だけど魔力をコントロールしきれていないリアンに使えるのかい?」


リドルの言葉にサラは鼻で笑い飛ばす


《勿論、魔力のコントロールも覚えさせる
今まではホグワーツの教師共が教えるだろうと思って手を出さなかったが、どうやら見当違いだったようだ
このままでは色々不便で仕方ない
これを機に完璧にマスターしてもらう》


ゆらゆらと尾を揺らしながら言うサラに別の意味で悪寒が走るリアン

だが確かに魔力のコントロールをマスターしなければこれからは成績に関わる問題だ

リアンは覚悟を決めて頷いた


《クククッ
楽しみだな》


愉しそうなサラにリアンは一瞬後悔するのだった







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2015/10/24
2017/08/05修正

 

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