英雄の兄と落ちこぼれの妹

□結末
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目が覚めると目の前に半月型の眼鏡とブルーの瞳が見えた

それはダンブルドア校長だった


「目が覚めたかね?」


段々と覚醒する意識にツンとしたアルコールの臭いが鼻を刺激する

周りを見回すと清潔なシーツに真っ白なカーテン

どうやら此処は医務室のようだ

枕元にはサラとヴォルがちょこんと座って此方を見ていた

リアンはゆっくり瞬きし、完全に意識が覚醒すると飛び起きた


『クィレル先生は!?
酷い怪我で…
無事なんですか!?』

「リアン、落ち着きなさい
どうやら君はまだ混乱しているようだね」


ダンブルドアはニッコリと微笑みリアンを窘めた


「クィレル先生は聖マンゴ病院におるよ
今は治療の為、入院しておる
君の見事なまでの治療のお陰で命には別状はない
君がクィレル先生を救ったのじゃ」


それを聞いてリアンはほっと胸を撫で下ろした

そしてふと賢者の石を思い浮かべた


『先生、石は?』

「そのことで大事な話がある」


ダンブルドアがいつものにこやかな顔を納めて真面目な顔をしたので、深刻な話なのかとリアンは緊張した


「石はもうないのじゃ」

『え?
どういうことですか?
クィレル先生は動けるような状態では無かった筈です…
闇の帝王だって…』

「石は君の中にある」


何を言っているのだろうか?

リアンはダンブルドアの言っている言葉の意味が理解出来なかった

ダンブルドアはきょとんとしているリアンに続きを話した


「君はクィレル先生を治療した後、疲労で気絶してしまったのじゃ
その後、わしが駆け付けた時にはまだ石はあった
君の手の中にの
じゃがわしが君から石を受け取ろうとした時に石が光っての
いきなり砕けたのじゃ
そして君の体に溶け込んで消えてしもうた」

『え…
で、でもぼくは何も…
それに砕けたって…
それじゃあニコラス・フラメルや奥さんのペレネレさんは…』


賢者の石には鏡から取り出す以外何もしていない

何故砕けたのだろう?

しかも自分の体の中に溶け込んだと言うではないか

フラメル夫妻は命の水で永遠の命を繋いでいる

その命の水を生み出す賢者の石が自分の体の中に溶け込んでしまったのなら、もう命の水は生み出せない

リアンは不安そうにダンブルドアを仰ぎ見る


「わかっておる
賢者の石はそう簡単に砕けるものではない
わしやニコラスが思うに賢者の石には特別な力と共に石自体に意思があると思っておる
その賢者の石の意思が君を選んだのじゃ」


ダンブルドアは元々ニコラス・フラメルと共に石を破壊する気で居たと言う


「永遠の命や無限の金という人の欲望を擽り貶める石じゃ
無くしてしまった方が良い
ただ…石の影響で君の体に何か起きないか心配でのぉ」


賢者の石がリアンの中にある

言われるまで気付かなかったリアンはダンブルドアの言葉に首を横に振った


『今のところは何も…
…ハリーは大丈夫なんですか?』


ハリーはリアンによって失神させられてしまった

あのままハリーがクィレルに触れたら、クィレルは死んでいたかもしれない

今思うと、ハリーは何て事をしようとしていたのか

リアンはハリーを恐ろしく感じた


「あぁ、無事じゃよ
隣のベットにおる
昨日、目が覚めたところじゃ
幸いにも酷い傷は一つもない
今日の学年末パーティーにも出席出来るじゃろう」

『そうですか…』


ハリーは大嫌い

クィレルを殺そうとしていたハリーは恐ろしい

キスしたハリーはよく分からない

でも一応唯一の家族で、自分の片割れ

失神呪文の事は少し悪いなと今更ながらに気が咎められた

そんなリアンを見抜いたダンブルドアはまた話始めた


「君はクィレル先生を助けたのじゃ
彼は欲望に染まり闇に落ちた
じゃが今は君に救われたと感謝しておった
ヴォルデモートをその身に宿していた為に、体は酷く衰弱しておるからしばらくは入院生活じゃがのぉ
もし彼があのままハリーに触れ続けて居たら、ハリーを守る君の母上の愛情が彼を焼き焦がしてしまう所じゃった
ハリーも生きるためにしたことじゃ
少し強引じゃったが、君は最善の事をしたのじゃよ

さて、そろそろ学年末パーティーが始まってしまうのぉ
リアンは出れそうかのぉ?」

『出たいです』

「ではわしからマダム・ポンフリーに言っておこう」


ダンブルドアはそう言ってベッドから離れてマダム・ポンフリーに声をかけた

マダム・ポンフリーは少し渋ったが、リアンが倒れたのは治癒魔法による疲労の為だったのですぐに許可が出た

まだ時間がある為、一度部屋に行ってから学年末パーティーに出ようとしてベッドから降りると、隣のベッドからハリーが声を掛けてきた


「リアン、無事で良かった」


マダム・ポンフリーとダンブルドアが出て行っていたので無断だが、ハリーのベッドを覗いたリアンは意外に元気そうな様子のハリーに少しホッとした

ハリーはもう一度リアンの名前を呼んで、リアンの手を握った


『何?』

「本当にありがとう
僕、リアンが居なかったらどうなっていたか…
それに本当に無事で良かった
リアンが居なくなるなんて想像出来ないよ」


手を引いてぎゅっと抱き付いてきたハリー

リアンは小さく溜め息をついた


『これじゃあどっちが上か分からないね』

「僕らは双子なんだから良いんだよ」


やんわりとハリーの腕をほどき、少し離れるリアン

不思議そうにみるハリーに、学年末パーティーに出るなら今は体を休めておくように言い放ち、リアンはヴォルとサラを抱き上げてさっさと医務室から出て行った








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