□悋気の果て
1ページ/7ページ





ヴォルとの事があってから二日経った

シャワーを浴びながら、鏡に映る鬱血痕や噛み跡の残る体にリアンは小さく溜め息を吐く

これのせいで髪もまとめられない上に寝着にも気を使う

幸い、タートルネックの寝着が幾つかある為にサラやリドルには今の所バレては居ない様だ

だがサラが時折、ジッと見つめてくる時があり、リアンはバレていないという確信を持てずに居た

ヴォルが無理矢理迫ったとはいえ、最終的には自ら口付けた以上は完全に無理矢理とは言えず、結局口を噤むことに決めたリアン

だがあれからヴォルとは話すどころか、同じ部屋には居るものの、視線すら合うことが無かった


『…犯されるよりそっちの方がつらい』


そう思ってしまう自分がおかしいとは思いつつ、リアンは小さく溜め息を吐いてシャワーを止める

バスタオルで水気を拭い、お風呂から上がってリアンはタートルネックのワンピースを着る

耳元にも鬱血痕があるせいで髪にも気を使う

休日だというのに気も抜けない事に憂鬱になりながらリアンが部屋に戻れば、リドルがベッドに座って本を読んでいるのが見えた


「おかえり」

『ただいま
…ヴォルとサラは?
バジは秘密の部屋に行ってるのは知ってるけど…』

「あいつは知らない
あの人はバジについて行った」

『そう…』


相変わらず仲が悪いせいか、リドルはヴォルとサラの名前を呼ばない

いつもあいつや本体、本人が目の前に居たら糞猫や糞爺という風にしか呼ばない

サラに対してもあの人か若作り爺と吐き捨てる始末だ


「課題は?」

『終わってるよ
だからぼくも本を読もうかな』


そう言って本棚に向かうリアンにリドルは静かに読んでいた本を閉じる

本を選ぶのに夢中になっているリアンの背後に立ち、リドルはリアンの生乾きの髪に触れる


「ここ、何かあるけど
どうしたんだい?」


触れられた場所は確かに鬱血痕があった

リアンは一瞬で青褪め、息を呑んだ


「…虫刺され?」

『…っそうかも
気付かなかったな…』


声が震えるのを必死に抑えながら、リアンは耳元に手を当てて鬱血痕を隠す

そんなリアンにリドルは目を細め、真紅に光らせる


「…よく見せて
危険な虫かもしれないし」


手を引かれ、リアンは大袈裟なまでに肩を震わせた


『だ、大丈夫だからっ』

「心配なんだ
ほら、大人しくして」


そう言ってリドルはリアンをベッドに座らせようと手を引いて誘導する

リドルの力に敵わず、リアンは座り込み、そんなリアンの前にリドルが立った

少し屈み、リアンの顔を覗き込むリドル

髪を耳に掛け、耳元の鬱血痕をジッと見るリドルにリアンは焦りを覚える


「痒かったり、痛みはある?」

『な、い…
も、いいでしょ…?』

「他にもあるかも
もっとよく見せて」


そう言ってタートルネックの襟の部分に指を掛けるリドルにリアンは目を見開き、逃げようと身を引いた


「…ねぇ
今ここで大人しく、そして正直に全てを話してくれるなら…
許してあげてもいいよ?」

『ぇ…』

「“誰に”付けられた“キスマーク”か…
ちゃんと僕に教えて?」


左肩を掴まれ、足の間に膝を割り込ませてベッドに膝をつくリドルにリアンは逃げ場がなかった

けれども正直に話せばリドルはどうする?

ヴォルはどうなる?


『…言えない』

「…そう」


深く、そして長く溜め息を吐いたリドル

そして次の瞬間、物凄い力で肩を押され、リアンはベッドに倒れ込む


「じゃあもういいよ
体に聞くから…







2017/09/22

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ