英雄の兄と落ちこぼれの妹

□要求
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『純血主義思想に関してどうするかはヴォルに任せるよ
魔法族って遺伝学とか科学に少し疎いから教えてあげた方がいい
それより結局ぼくはどうしたいかって言うと…』


変わらない願い

リアンの望みはずっと同じものだ


『ずっと一緒に居て欲しい
ヴォルにもリドルにも
だから…ぼくと同じ不老不死になって欲しいの


肉体を与える代わりにヴォルとリドルは命の水を飲む


それがぼくの求めること
交換条件だよ』

「…何を言っている
貴様に頼らなくても肉体は取り戻せる」

『でも二つのロケットや指輪、ハリーやぼくの中にあったヴォルの一部はぼくの手元にある』


分霊箱をかたに要求するリアン

見せつけるようにリドルのロケットを取り出した


「それにマグカップと髪飾りも既に」


人型のサラが現れると、ヴォルが部下であるベラトリックス・レストレンジに渡したはずのマグカップとホグワーツにあったはずの髪飾りをリアンの膝に落とした

これで全ての分霊箱がリアンの元へ集められた


『これ全部ヴォルとリドルの大切なものでしょ?
変なことされたくないよね』


そう言って微笑むリアンにヴォルは目を細める

まさか脅迫までするとは…


「…なぜそこまで俺様にこだわる
わざわざ分霊箱を使って脅迫までして…
俺様は不死を求めて分霊箱を作った
なのにわざわざ不老不死にするという条件を突き付けて、貴様に何のメリットがある?」


メリットねぇ…

リアンは小さく呟きながらガラス玉に入っているヴォルの魂の一部を眺めた

リアンの取引はヴォルにとっては願ったりなものだ

ずっと求めてきた不老不死になることを条件に完璧な肉体を与えられる

だが一方でヴォルはリアンのメリットが見出せず、不信感を募らせていた


『ぼくはヴォルに出会った事から全てが変わった』


ダーズリー家で酷い扱いを受け

ハリーには振り回され

疲れ切っていたリアン


『ヴォルが居なかったらスリザリンにも入ってなかった
ずっとハリーにおもちゃにされて…
心が壊れていたか、意思のない人形にされていたかもしれない』


ハリーの我が儘を聞いてもっと重傷になっていたかも

死んでいた可能性だってある

そうじゃなくても耐え切れずに自殺した可能性だってある


『サラにも会えなかったかもしれない
クィレル先生だって死んでたかも…
リドルだってあのまま壊されていた
レギュラスだって助けられなかった
だからぼくの今までの出会いや出来事、全部ヴォルに繋がるんだ
ヴォルから始まったんだ』


リアンにとってヴォルは恩人だった

リアンがヴォルを変えたと同時に、ヴォルもリアンを変えたのだ


『ヴォルが教えてくれたんだ
望んでもいいと
だからぼくは望む
ヴォルともっとずっと側に居たい
リドルと離れたくない
ぼくにとってそれが全てなんだ
みんなで一緒に居たい
その為ならぼくはどんな手段を使ってでもみんなを側に置く』


目的の為なら手段を選ばぬ狡猾さ

リアンもやはりスリザリン生だと

そう思わされたヴォルとリドルだったが、でも…と続けるリアンに首を傾げる


『なるべくなら合意の上で側に居て欲しいから…
拒まないで欲しい
出来れば脅迫とか無しでちゃんと受け入れてくれたら…』


やっぱりリアンだ

非情になり切れないリアンの言葉に呆れて溜め息を吐くヴォルとクスクスと笑みをこぼすリドル

そんな二人を不安気に見つめるリアンにヴォルはもう一度溜め息を吐いた


「…ったく
そんなんでどうする
そんな甘っちょろさだとすぐに泣きを見るぞ」


ヴォルのお叱りに言葉が詰まるリアン

だが…と続けるヴォルに今度はリアンが首を傾げた


「そんな甘っちょろい奴に絆される俺様も阿呆だな…
貴様の要求を呑んでやる
命の水を飲み、貴様の…傍に居てやる
取引成立だ」


ヴォルのその言葉にリアンはパッと花が開くような満面の笑みを浮かべた


『やった!』


小さくガッツポーズをするリアンにサラとレギュラスは温かな眼差しで見つめていたが、ふとレギュラスはあることに気付く


「リアンは命の水の作り方を知っているんですか?」

『え?』

「僕と同じやり方なら口移しになりますよね?」


その言葉にレギュラス以外の全員が固まった







2017/08/30

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