英雄の兄と落ちこぼれの妹

□巻き込まれる
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甲高い鳴き声にリアンの意識が浮上する


《気が付いたか
少し面倒な事が起きてる
起き上がれるか?》


サラの言葉に目を開けて覗き込んでくるサラとヴォルを見る

ヴォルが目線で何かを示すと同時にまた甲高い鳴き声が響き渡る

何かと思って見れば漆黒のヒッポグリフが教師達に威嚇しているのが見えた

中庭にベンチに寝かされていたようで、起き上がればヒッポグリフがリアンに気付き、威嚇するのを止めて擦り寄ってきた


「おぉ、気が付いたか
そのヒッポグリフがずっとお主を守っていての
治療が出来なんだが大丈夫かの?」

『この子が…?』


気遣うかの様に首を傾げて見つめてくるヒッポグリフ

このヒッポグリフが授業で懐いてくれたあのヒッポグリフだと思い出し、リアンは手を伸ばして嘴を撫でる


『大丈夫…
ありがとうね』


撫でられて気持ちよさそうに目を細めるヒッポグリフは先程とは打って変わってとても大人しい

その様子を見ていたダンブルドアはホッホッホッと笑みをこぼした


「そのヒッポグリフは随分とお主に懐いとるようじゃのぉ」

『人懐っこい子みたいで…』

「いいや、むしろ警戒心が強いようじゃ
誰一人として君に近付けさせようとせなんだからのぉ
じゃが城にずっと置いておくわけにはいかんのでな
すまんがハグリットの元へ返してくれんか?」


この漆黒のヒッポグリフはハリーも受け付けなかったようで、リアンに任される

特に怪我などがなかったためにリアンはそのままヒッポグリフを連れてハグリットの元へと尋ねた


「いつに間に逃げ出しとったんだ!?
リアン、すまねぇな
ありがとう」

『いいの
むしろその子に助けられたみたいだから
あんまり叱らないであげてね』


来る途中、ヴォルとサラから経緯を聞いたリアンはハグリットにそう言って城に戻った


《無傷なのはスネイプとかいった奴の守護魔法のお陰だ
後で礼を言うんだな》

『スネイプ先生の…
そういえばスネイプ先生は大丈夫かな?
グレンジャーとウィーズリーの攻撃を受けたんでしょう?』

「意識が戻っていたんだ
大丈夫だろう
それよりもお前の方が早く休むべきだろう」

『そうだね
すごく疲れちゃったよ…あっ!』


リアンは疲労で足元の注意が散漫だったようで、何かを蹴ってしまい廊下に金属音が響く


「懐中時計か?」


リアンの腕から廊下へと降り立ったヴォルはリアンが蹴ってしまったものを見る

蹴った衝撃でヒビの入ったその時計を手に取り、リアンは人の物を壊してしまったと罪悪感を抱いた

直そうと杖を取り出すために内ポケットを探るが杖が無いことに気付いた


『あれ?
杖が…』

「杖なら…」


ヴォルが何かを言おうとした瞬間、リアンの手にある懐中時計の針が物凄いスピードで逆回転し始める


《リアンっ
それを捨てて逃げろ!》


様子を見ていたサラの言葉にリアンは懐中時計を手放そうとするが、その前にリアンは懐中時計の羅針盤から溢れ出る光に飲み込まれた


「罠か!?」


光が収まると廊下にはヴォル以外誰も居なくなっていた

リアンも

サラも

ヴォルは辺りを見渡し、時計すらもない事に舌打ちした


「クソッ…リアン」


残されたヴォルはその場を後にする







2017/08/22

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