英雄の兄と落ちこぼれの妹

□記憶との融解
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「何故サラザール・スリザリンが生きているのか
君と一緒に居るのかは分からないけど…
まぁそれは後でゆっくり聞かせてよ」


歩みを止めたリドル

リアンの視界に映るのは、天井にも届く年老いた魔法使いを模した石像と、床に横たわる赤毛の小柄な少女

少しずつ体の感覚が戻ってきたリアンは微かに声を洩らす


『じ…にぃ…』

「僕の金縛り呪文からこんなに早く回復するなんて…
やっぱり君は面白いよ」


少し興奮した様子のリドルにリアンは眉を顰めた


「ようこそ秘密の部屋へ
これから僕と君とバジリスクの住処になる場所だ
ゆっくりしていってよ」

『…ぼくは…ここに…住むつもりなんて、無い』


身を捩るがリドルの腕に抱え上げられたままのリアン

リドルは愉快そうに笑う


「ははは
何言っているんだい?
君はここに住むんだよ
とりあえず、何から話そうか」


リアンを床に寝かせたリドルはリアンの頬を撫でながら微笑む


『何故…ぼくなんかに構うの?』

「確かにハリーは赤子だったのに闇の帝王を退けた
死の呪文を受けても生き延びた
何故?
とても興味がある」


でも…と続けるリドルにリアンはリドルの深紅の瞳を見つめた


「君はもっと特別だ
強大な魔力
僕と同じ左目
弱い心
ハリーとは違って限りなく闇に近い君の存在自体に酷く惹かれたんだ」


リアンの額にリドルは己の額を当てて己と同じ深紅の瞳と己とは違う翠の瞳を見つめる


「所詮記憶に過ぎない僕が
愛なんて馬鹿馬鹿しいと思っていた僕を
惹かれさせた君は一体なんなんだろうね…」


ふふ…と笑みをこぼすリドル

その目は甘く蕩けて、熱を持った眼差しでただただリアンを見つめる


「ハリーには渡さない
傷付けることしかしない
劣等感しか与えないハリーには…
サラザール・スリザリンにも渡さない
だって僕は君を“愛している”んだから…」

『リ、ドル…』


ゆらりゆらりと揺れるリドルの深紅の瞳にリアンは目が離せなくなった

そして重なる唇

体温が低いリアンよりも更に冷たいリドルの唇

そこから奪われる魔力と与えられる魔力にクラクラとする頭で必死に考え様とするが、結局叶わず息を弾ませるリアン

そんなリアンに笑みを浮かべたリドルはリアンの耳元に口を寄せる


「もうすぐハリーがここに来る…
リアンはここで見ているといい
ハリーが…死ぬ所を…


そう言って離れたリドルにリアンは涙をこぼしながら見つめた

待って…

待って…

まだ…

話したい事があるの…

行かないで…

リアンの意思とは裏腹に声が出せない手が動かない

離れて行くリドルにリアンは何故かリドルが消えてしまう気がして涙をこぼした







2014/12/19
2015/1/19誤字修正
*あとがき
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