英雄の兄と落ちこぼれの妹
□自分の中の真実
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「…確かに、俺様はこの事件の核心に限りなく近いだろう
五十年前の事件の事も知っている
犯人も、秘密の部屋も、秘密の部屋にいる怪物も
五十年前の事件の犯人はまだ捕まっていない事もな…」
ドラコの話では犯人は捕まっていた筈だ
でもヴォルの話では犯人は捕まっていない
おそらく、ヴォルの話が真実なのだろうとリアンは思った
「日記の事も知ってる
その正体もな
だが何故あれがここにあるのか、何故再び事件が起きたかは分からない
だから俺様はあの日記を探していたんだ
結局、あれからすぐにお前の兄の元から日記は盗まれて行方が分からなくなった」
ヴォルの言葉にリアンは目を見開いた
あの日記が盗まれた…
「今回の事件はお前には危険過ぎる
関わりを持って欲しく無かったのだ」
『…ヴォルが隠している事が沢山あるのはなんとなく分かってる
だけど…』
言いたくない事を無理に言わせたい訳ではない
リアン自身を思ってヴォルが隠している事を、知って欲しくない事を知りたい訳じゃない
でも自分は何も知らずに平気で居られる程馬鹿じゃない
なんとも言えぬ歯痒さにリアンは目を伏せた
「…俺様はお前を殺すつもりはない
お前が言ったように側に居る事も承認した
お前が首を突っ込まなくても、あの愚兄が首を突っ込めばお前の意思など関係無しに事件に関わってしまう事も分かっている
だがなるべく遠ざけれるなら、知らないままで居れるのなら
遠ざけたかったし知らないままで済ませたかった…」
何処か遠くを見ながら言うヴォルにリアンはヴォル自身が何処かへ行ってしまう様な錯覚に襲われた
思わずリアンはヴォルを抱き上げて苦しくない程度にぎゅっと抱き締める
『傷付くのは慣れてるから…
だから心配しないで
そしてそんな顔しないで』
「リアン…」
目を見開いたヴォルだったが、そっとリアンに擦り寄った
「お前は俺様が守ってやる
だから…
お前もそんな顔をするな」
今にも泣きそうなリアンの表情にヴォルはそう言った
フンと鼻を鳴らしながらいつも通りの表情に戻ったヴォルにリアンも笑顔を浮かべていつもの表情に戻る
「…全ては話せない
だが…
俺様はお前を傷付けない
これだけは…真実だ」
『…ぼくも
何があってもヴォルを信じてる
ぼくの真実だよ』
リアンの言葉にフッと笑みをこぼすヴォル
リアンはヴォルを抱き上げて隠し部屋を出た
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2014/12/17
2017/08/04修正
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