英雄の兄と落ちこぼれの妹

□最悪のバレンタイン
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『食欲無くした…』

「これで食欲がある方が問題だ」

《無惨なことだ…》


とりあえず何事だと三人は呟きながら、仕方なく大広間に足を踏み入れる

スリザリンのテーブルに行くと、顔色の悪いドラコが居た


『ドラコ…』

「リアンか…」


疲れ切った様な、呆れ返った様な表情のドラコにリアンは思わず口を噤んだ

そして教師の席に居る目に痛い様なケバケバしいピンクのローブを纏ったロックハートが手を上げて合図する


「静粛に」

《リアン、彼奴の周りの教師達の顔を見てみろ》


サラの言葉にリアンはロックハートの両側に並ぶ教師達を見た

教師達は石のように無表情で、マクゴナガル先生は頬がヒクヒクと痙攣している

スネイプ先生は表現出来ない程もっと酷い顔つきで見れたものではなかった

ロックハートが考える病んだ空気を払って気分を盛り上げる方法は他の教師達から怒りを買う事なのだろうかとリアンは本気で疑問に思った


「バレンタインおめでとう!
今までのところ四十六人の皆さんが私にカードを下さいました
ありがとう!」

「たかが四十六人で威張れる事なのか?」


ロックハートの言葉にヴォルが突っ込みを入れる

ヴォルの言葉から察するに、四十六は少ないらしい

じゃあ一体何人から貰って居たんだという疑問をリアンは飲み込む


「皆さんをちょっと驚かせようと、私がこのようにさせていただきました
しかも、これが全てではありませんよ!」


ロックハートはそう言って手を叩くと、玄関ホールに続くドアから金色の翼とハープを持った無愛想な小人達がゾロゾロと入ってきた


「私の愛すべき配達キューピットです!」


にっこりと微笑むロックハートに顔が引き攣ったのはリアンだけではないだろう


「今日は学校中を巡回して、皆さんのバレンタイン・カードを配達します
そしてお楽しみはまだまだこれからですよ!
先生方もこのお祝いムードにはまりたいと思っていらっしゃる筈です!」


ロックハートの言葉に教師達は顔が引き攣り、般若の如く殺気を滲ませてロックハートを睨み付ける

だが気づかないロックハートは更に続けた


「さぁ、スネイプ先生に“愛の妙薬”の作り方を見せて貰ってはどうです!
ついでに、フリットウィック先生ですが、“魅惑の呪文”については私が知っているどの魔法使いよりもご存知です
素知らぬ顔して憎いですね!」


フリットウィック先生はあまりの事に両手で顔を覆い、スネイプ先生は立ち上がって目が座った状態で生徒を見回した


「我輩の元に来た生徒には勿論薬をやろう
…ただし、その場で一気に飲み干す事が条件だ


毒薬でも渡す気だ!

恐ろしい程ドス黒いモノを纏うスネイプ先生に生徒達は、例えロックハートのファンの女子であろうともスネイプ先生の元へ行く事は無いだろう


『“愛の妙薬”や“魅惑の呪文”って…
バレンタインってそんな恐ろしい物だっけ?』


青褪めながら言うリアン

カードや花束、お菓子などを送り合うのがバレンタインだと認識して居たリアンにはロックハートの言葉がとても恐ろしく感じた


「だからクリスマスの物は既製品以外はダメだと教えただろう」


既製品でもヴォルとサラの厳重な審査を通った物だけがリアンの手元に残る

ヴォルやサラが何を警戒していたか初めて知ったリアンだった







2014/12/17

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