英雄の兄と落ちこぼれの妹
□存在と真実
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リアンの前に人間の姿のサラが複雑そうな顔をしながら立っていた
リアンはそんなサラに首を傾げる
「最近アイツが離れないから話が出来なくてな
夢に立たせて貰った」
『ぼくもサラと話がしたかったから…』
サラは静かに頷いた
分かっているとでも言うように
「秘密の部屋は私が作って残したものだ
あの当時、魔女狩りが盛んな頃で、マグル出身の子供をホグワーツに入学させる事はとても危険だった
魔力を持った子供達はともかく、マグルの両親がいつ協会に密告するか分からなかったからだ
自分の子供でも協会の審判に出す様な時代だったからな…」
ホグワーツにはマグル除けの魔法を掛けている
それに魔力が無ければ見ることすら出来ないようにしていても危険なことには変わりなかったというサラ
「マグル出身の子供達の入学を拒めばその子達の命を見捨てる事になるが、当時は純血の魔法使いの方が多かった事もあり、かつての私はホグワーツを…純血の魔法使いの子供達を守る事を優先させた
だがゴドリックは私と違ってマグルの子供達を守る事を優先するべきだと反発した
そして…」
『“サラザール・スリザリンはホグワーツを去った…”
“ホグワーツの歴史”に残されていたサラの最後はそれが原因なの?』
「あぁ…」
サラは憂いを帯びた悲しい表情で頷いた
サラの表情を見てリアンはそっとサラの手を握る
サラはそんなリアンの優しさに胸が締め付けられる様な、けれども満たされる様な感覚に笑みをこぼす
『秘密の部屋は結局どういうものなの?』
「秘密の部屋は私の子孫に残したものだ
私は一族の中でも特に魔力が強く、他の者たちには無い力を持っていた
それがパーセルマウスだ
パーセルマウスの者だけが秘密の部屋を開け、秘密の部屋に残したものを操る事が出来る
ホグワーツを守るようにと私が残したものだ」
『それが秘密の部屋の怪物と言われてるものなの?』
「まぁそういうことになる
一応私のペットなのだが…」
言い辛そうに口籠るサラだったが、意を決して話す
「少し大きいから怪物と言われがちなのだが…
バジリスクという蛇だ
バジリスクは鶏の卵から生まれ、ヒキガエルの腹の下で孵化する“毒蛇の王”で、バジリスクの目を見たものは死んでしまうのだ
だが本当は心優しい素直な子なのだ
長い間、閉じ込めてしまったが…」
『じゃあミセス・ノリスは?
石になったって聞いたけど』
「バジリスクの目を見たものは死ぬが、それは直接見ないと効果を成さない
何かを通してバジリスクの目を見たら死なぬまま石になるのだ」
秘密の部屋の謎は解けたが、肝心の秘密の部屋を開けて壁に文字を書いたものが誰なのか分かっていない
『今回の騒動にサラは…』
「関わっては居ない
バジリスクと話をしようと思うのだが…
長い間閉じ込めた私が今更バジリスクに合わせる顔が…」
そう言って俯くサラにリアンはクスッと笑みを零す
『バジリスクは動き回ってる
怪物と言われるぐらいなのだから外に出ようと思えば出れたはず
でもサラの言ったことを従順に従い続けてるバジリスクはきっと怒ってないよ
怒ってても謝れば良い
きっと許してくれる』
そう言ったリアンを不安そうに見たサラだったがゆっくりと頷いた
「そうだな…
バジリスクに謝らねばな…」
『うん』
「だがリアン、今回秘密の部屋を開けた者が誰かまだ分からない
気をつけろ
猫だけで済まないかもしれない…」
真剣な表情で言うサラにリアンも顔が強張る
『嫌な予感がするの…
サラも気をつけて…』
サラが頷いたと同時にリアンの夢は終わりを告げた
目覚める直前、サラの声が頭に響く
---私はバジリスクに会いに行く
その為しばらく離れるが心配するな
絶対にリアンの元へ戻ると約束しよう…---
目が覚めたリアンは、いつも枕元で寝ているサラが居ない事に気付いた
帰ってくると約束してくれたサラ
だが心配には変わりない
どうか何事も無く無事で帰ってくる様にリアンは願ったのだった
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2014/1/14
2017/07/30修正
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