英雄の兄と落ちこぼれの妹
□落ちこぼれ
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新学期の授業は順調だった
ハリーと同じ授業は今の所無く、リアンは穏やかにホグワーツでの学校生活を過ごした
そして新学期初めての闇の魔術に対する防衛術の授業
新任のギルデロイ・ロックハートの授業に興味を持っていたリアンは少し楽しみにしながら教室に向かう
教室に着いたリアンはドラコと並んで座り、教卓に佇むロックハートを見た
ロックハートはクラス全員が着席すると大きく咳払いした
「ギルデロイ・ロックハート
勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員
そして“週間魔女”五回連続“チャーミング・スマイル賞”受賞
もっとも、私はそんな話をするつもりはありませんよ
バンドンの泣き妖怪バンシーをスマイルで追い払ったわけじゃありませんしね!」
ロックハートは笑って欲しかったのだろうが、生徒達は白けていた
だがロックハートは気にしていないのか、気付いていないのか、話を続ける
「全員が私の本を全巻揃えたようだね
大変よろしい
君達がどのくらい私の本を読んでいるか、どのくらい覚えているかをチェックするだけですからね」
ロックハートはそう言ってペーパーテストを配り始めた
だがそのテストの内容にリアンは思わず声を上げそうになる
何故なら、そのテストの内容は闇の魔術に対する防衛術に関係するものではなく、すべてロックハートに関するものだったからだ
「三十分です
よーい、はじめ!」
リアンは一応教科書に一通り目を通した
だが内容があまりに馬鹿馬鹿しく、抽象的だった為にロックハートが本当にやり遂げた事なのか疑った
配られたペーパーテストに書かれている好きな色や密かな大望は何かを答えよという問題達にリアンは一気にヤル気を削がれた
《こんなもの解かなくても良い
馬鹿馬鹿しい…》
サラが吐き捨てる様に言った
ヴォルもサラの言葉に無言で頷いて、リアンは複雑な思いを抱く
テストだから成績に関係するのではないかと思ったが、解く気すら削がれる様な内容のテストだ
二人もこう言ってるしもういいかとリアンは深く溜め息をついて羽ペンを置いた
三十分後、テストを回収したロックハートはクラス全員の前でそれを捲った
「おぉ、そういえばスリザリンにも大物が居ましたね
リアン・ポッター
生き残ったハリーの妹」
ロックハートの言葉にリアンとドラコ、ヴォルとサラが膨大に顔を歪めた
「まぁ私に比べたら大した事はありませんが、君のお兄さんはすこーし思い上がって居ましたので、君はそんな事がないよう身を弁えなさい」
ロックハートの言葉にリアンは呆れてものも言えなかった
ハリーは確かに思い上がっているが、何故それを自分に言われなくてはいけないのだとリアンは不思議で仕方がなかった
ロックハートはそれだけに留まらず、リアンの左目の目元に触れた
「君のお兄さんは額の傷だったが、君は確か左目だったね
そのピジョン・ブラッドの輝きに秘められた秘話を是非ともゆっくりお聞かせ願いたいよ」
『…赤ん坊の頃の事なんか知りません』
うっとりと目元を撫で上げるロックハートにリアンは鳥肌がたった
そして慌ててやんわりと手を払うが、ロックハートの手が今度は頬に移動しただけだった
「君は美しい
お兄さんとは違うらしいがね
闇の帝王を倒したのは君じゃなくハリーなのだろう?
君は側に居ただけだ」
『だから何なんですか?』
「君はお兄さんと違って英雄でもなんでもない
お兄さんを糧に自分も有名になっただけだ
双子という理由だけで
お兄さんと違って箒の才能も、帝王に打ち勝つ力も無い
実際はただの落ちこぼれに過ぎない」
耳元で囁くロックハートにリアンは目の前が真っ赤に染まった
ロックハートはそんなリアンに気付かず、授業を進めた
「大丈夫か?」
《あいつの言った事は気にするな
あいつは相当ひん曲がった醜い人種らしい》
密かに気遣うヴォルとサラ
だがリアンには二人の声が届いておらず、ただひたすらにロックハートに言われた“落ちこぼれ”という言葉が頭の中をグルグル回っていた
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