英雄の兄と落ちこぼれの妹

□いつものこと
2ページ/4ページ





「貴様らぁ!!
逃がさんぞ!!!!」


すごい剣幕で怒鳴り散らして部屋に入ってくるバーノン

やっとのことで乗り込めたハリーはリアンに手を伸ばす


「リアン早く!」


なんとかヘドウィグを渡して車に乗り込もうとするリアン

だがバーノンがリアンの肩を掴み、窓の淵から引き摺り下ろそうとした

ヴォルが牙を剥き、バーノンの手を容赦なく引っ掻くが、怒り狂ったバーノンには効果が無く、リアンは部屋の中に投げ飛ばされてしまった

部屋にある箪笥にぶつかって床に這いつくばるリアン

バーノンはそんなリアンに目もくれず、ハリーの足を掴んで部屋に引き摺り込もうとする

だが車を出して逆にバーノンを窓から外に引き摺り出し、逃げるハリー達

リアン呆然と空の彼方に消えていく車を見つめた


『うそ…』


ヴォルやサラも呆然と窓の外を見つめていた

階段からドシンドシンとバーノンが登って来るのが伺えた

部屋に入ってくるなりバーノンはリアンの頬を思い切り叩いた

勢いでベッドに倒れ込むリアンの髪を鷲掴み、引き摺るバーノンにヴォルもサラも引っ掻いたり、噛み付いたりと抵抗するが、怒り狂っているバーノンには通用しなかった

物置に放り込まれたリアン

慌てて駆け寄るヴォルとサラは、心配そうにリアンを見るが、顔を俯かせているので見えなかった

バーノンは怒鳴り散らしながら扉に鍵を掛けてリアンを閉じ込める

リアンは叩かれた頬と叩かれた拍子に切れた唇、捕まれて引き摺られたせいで痛む頭皮やぶつけた身体の傷みに身を縮み混ませた

溢れ出る涙は痛みのせい?

それとも置いていかれたせい?

静かに身を震わせながら泣くリアンを労るヴォルとサラ

そっと身を寄せ、静かにリアンが泣き止むのを待つ二人

そっと顔を上げるリアン

叩かれた頬は赤く腫れていて、切れた唇からは血が滴ってなかなか止まらない

二人は心配そうに見ていたが、リアンの目を見た瞬間、固まってしまった

リアンの目はまるで底のない闇のように暗く濁っていた

いつもは宝石のような煌めきと暖かい光が宿るリアンの瞳

だが今はそんなものは一欠片もなく、ただただ暗く濁っていた


「リアン…」

『いつものこと…
いつものことだから…
いつものことだから…
いつもの…』


ただひたすらそう繰り返し呟くリアン

いたたまれなくなったサラは無理矢理魔法でリアンを眠らせた


《まさかこんなことになるとは…》


ヴォルはサラが魔法を使ったことに驚いたが、今はそんなことに構っている余裕はなかった

これからどうしたらいい…

このままでは壊れてしまう…

リアンの心が壊れてしまう…








次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ