英雄の兄と落ちこぼれの妹
□最悪の誕生日
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タッタッタッタッタッ
タッタッタッタッタッ
階段から誰かが降りてくる音がして、三人は顔を見合せた
応接間までが聞こえているかどうか怪しいが、ここは階段下にある物置きのためよく聞こえていた
リアンは慌てて物置きの窓から廊下を見ると、コウモリの様な長い耳をした見たこともない生き物が走っていった
すぐ後にハリーも足音を忍ばせて、長い耳の生き物を追い掛けていった
「あれは…、屋敷しもべ妖精
何故マグルの家に?」
長い耳の生き物を見てヴォルが言う
妖精と言うのだから魔法界の生き物だろう
それよりもリアンはその屋敷しもべ妖精とハリーがキッチンに行ったことの方が重大だった
『お客様が来てるのにマズイ!』
慌てて物置から出るリアン
ヴォルとサラはリアンの肩に乗り、着いていく
リアンがキッチンに行くと、ハリーは泣きそうな声で止めてよと繰り返し、屋敷しもべ妖精はペチュニアお手製の山盛りホイップクリームとスミレの砂糖漬けが天井近くを浮遊しているのを眺めていた
屋敷しもべ妖精は戸棚のてっぺんの角の方にちょこんと腰掛けてハリーを見やる
「あぁ、ダメ
ねぇ、お願いだ
…僕殺されちゃうよ…」
「ハリー・ポッターは学校に戻らないと言わなければなりません」
状況が上手く掴めないが、この屋敷しもべ妖精はハリーにホグワーツに戻らないよう強要しているようだ
だがハリーは勿論、リアンもそれは受け入れられない
ダーズリー家には居られない
でも屋敷しもべ妖精はそれを理解していない
「では、ハリー・ポッターのために、ドビーはこうするしかありません」
屋敷しもべ妖精のドビーが指を鳴らすと、デザートは大きな音をたてて床に落ちた
そしてドビーはパチッという音と共に消えてしまった
そこからが地獄だった
バーノンがキッチンに慌てて飛び込んで来たのだ
頭のてっぺんから爪先までデザートを被ったハリーと、真っ青な顔をして立ち尽くすリアンを見られた
その時はバーノンが上手くその場を取り繕って、上手くいったかのように見えた
ペチュニアが食後にミントチョコのアイスを配っているとき、巨大な梟が一羽、食堂の窓からバサーッと舞い降りて、メイソン夫人の頭の上に手紙を落とし、またバサーッと飛び去っていった
メイソン夫人はギャーッと叫び声をあげた
どうやらメイソン夫人は鳥が大の苦手らしい
メイソン氏はカンカンに怒ってダーズリー家に文句を言うだけ言うと出て行ってしまった
バーノンは小さな目に悪魔の様な炎を燃やしてハリーとリアンに迫った
そして梟が持ってきた手紙を翳して読めと毒々しく言った
ハリーは手紙を手にして読み始めた
その手紙は魔法省からで、通告だった
卒業前の未成年魔法使いは学校の外で魔法を使ってはいけない
だがドビーの浮遊術でハリーとリアンに警告の手紙が来たのだ
再び魔法を使用すればホグワーツから退校処分が下される
そう書かれた手紙を読み上げたハリーにリアンはこの後の展開がなんとなく予想出来た
ハリーは学校の外で魔法を使ってはいけない事を黙っていた
それどころかダドリーを脅したりもしていた
バーノンは怒り狂い、ハリーどころかリアンまで閉じ込めてしまった
丁寧にドアに‘餌差入口’まで取り付けて
少量の食事しか口に出来なくなったリアンは段々と目に見えて弱っていった
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*あとがき