二年後設定銀桂話

□将としての
1ページ/3ページ

夕刻。
万事屋の応接間兼居間のソファに、銀時が身を沈めるように座っていると、外でだれかが来る物音がした。
玄関のほうから訪れを告げる声が聞こえてくる。
だが、銀時は返事せずにいた。
すると、玄関の戸が開けられるガラガラッという音が聞こえてきた。
それでも、銀時はソファに深々と座ったままでいる。
しばらくして。
「だらしないな」
凜とした声がとがめた。
銀時はそちらのほうに眼をやる。
桂だ。
化粧に、チャイナドレス、というヅラ子の格好をしている。
ようやく銀時はソファに預けていた上体を起こす。
だが、姿勢良く座ることはせずに、少しまえかがみになって首筋をかく。
「やってくるなり文句言うんじゃねーよ」
「……新八君のことだが」
桂はさっさと話題を変えた。
応接間兼居間の戸口に近いほうの、銀時の向かいにあるソファに腰をおろす。
チャイナドレスの深いスリットからのぞく脚は綺麗だ。
「土方に助けられて、家に帰ったそうだな」
「ああ」
「いきなり二年後になったとか、わけのわからないことを言っているそうだな。それは、つまり、この二年分の記憶が欠落している、記憶喪失ということか?」
「さあねェ。よくわからねーよ」
銀時は昨日のことを思い出す。
早朝に、お妙から電話がかかってきた。
新ちゃんの様子がなんだかおかしい、と。
今からそちらに行くようだから宜しく頼む、とのことだった。
そのあと、新八が出勤してきた。
電話でお妙が言っていたとおり、この二年間にあったことをまるで知らない様子だった。
一週間の休暇があけてみれば二年後だった、と驚愕していた。
とりあえず、銀時は神楽とともに、お戸勢やキャサリンや芙蓉の協力も得て、新八を志村家に帰るように仕向けた。
「だが、妙なことだが、土方もまわりがいきなり二年後になったとか言ってるらしーぞ」
「新八君を助けたのは仏のトシだからではない、ということか」
「ああ」
土方は新八を自分の仲間だと思ったらしい。
それで、新八を屯所から逃がした。
けれども、自分は屯所に残り、逃がした理由はかわいそうだったからと仏のトシらしいことを言ったそうだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ