タイムリミット

□水晶の中、水晶の外
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占い師という職業は、時に見たくない物まで見えてしまう。


今日、占った男は妻の様子がおかしい、と……
…そんな事は探偵にでも依頼してほしいもんだが…
こんな胡散臭い仕事、客を選んでる暇なんてない。

だから、占ってやった。

指紋、汚れ一つない水晶に手をかざして、目を瞑り…
水晶が語りかけてきた時、目を開ける。

語りかけると言っても、掌に少し熱や冷気が伝わってきたら、なのだが…。

もしこの時、掌に熱…すこしの暖かさが伝われば、良い知らせ。
冷気…冷たいものが伝われば、悪い知らせ。


…冷たかった。

氷の上に手を添えた様な冷たさが掌に伝わり、目を開け水晶の中を見つめた。



客の男を仕事場へと見送る女…妻だろう。

客の男が去って、家の中に入る妻。

少ししてから家にやってきた見知らぬ男。

妻がそれを出迎え、家の中に招き入れる。



……確証なんてない。

だが、これは決定的だろう。


さて、なんと言おう。
あなたの妻は男と出来てますよ

そんな事言ってみろ…殴られるぞ。


「…どうでしたか?」


そわそわとした様子で問いかけてくる客の男。

…まぁ、私も仕事上殴られたりするのは慣れている。
それに、真実を伝えてこそ…占い師だろ。


「あなたを見送った後、男と家で密会しているのが映り込みました」


客の男の顔色が悪くなった。

…心当たりでもあったのだろう…。
なんて女運の悪い奴。


「…ありがとう、ございました…」


男は金を払って、人1人殺しそうな顔で去って行った。


……かわいそうにね。
私が男だったら、こんな女には引っかからないようにしようか。

…女だったら、さっきみたいな男をカモにしよう。


去って行った男を最後に、この日 客は来なかった。

時刻は11時50分。


もういいか、今日はもう来なさそうだ。


占い師は片づけを始めようと、水晶に手をかけた時、突然水晶から痛みを感じる程の冷気がこぼれた。


「っ!」


驚いて手を引込め、嫌な予感を感じながら水晶の中に視線を向けると、

 
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