現実逃避×閉鎖区域

□諸説紛紛×森林
1ページ/10ページ



木々の間を走り抜け、少し広い、木々の生えていない…
いや、生えようとしない場所に出た。

葉の間から差し込む日の光。
その光を浴びるようにして立っていたのは、姿を消した黒い子。


「まさか、狼を仕掛けただけで気づかれるとは思わなかった」


椿鬼。


「アンタがココに来たってことは、桜羅の方にはあの2人が残ったんだね」


椿鬼は銃を手にし、咲夜を睨み付ける。


「…アンタは戦いが好きそうだね、…いっとくけど、俺たちは弱いよ。
ただ、ちょっと持っている力の対処がめんどくさいだけ。…隙さえつけば直ぐに死ぬ」


「…何が言いたいのですか?」


椿鬼の意味不明な言動に咲夜は首を傾げた。


「…つまりね、弱いからこそモノに頼る。力に頼る。
…頼られた方に罪はないから、許してやってね」


そういうと椿鬼は空へと銃口を向け、引き金を一発引いた。

静かな森林に響く一発の銃声。

その音が消えるころ、森林のあちこちから咲夜に向け殺気が向けられ始めた。


「…頼られたもの…、つまりは動物たちに罪はない、だから殺すな、と?」


咲夜は手の中のモノをグッと握りしめ、四方八方を固める狼やら蛇やらタカやらを睨み付け、鼻で笑った。


何をバカな事を抜かす
このガキは…


「敵は敵、敵に頼られた奴もまた敵。
殺すに決まってるでしょう? 敵は、死なのですから」


「そう、…冷たい人だね」


椿鬼のため息とともにとびかかる無数の狼の群れ。

咲夜はミカエルから受け取った石の付いた腕輪を付け、前後左右から襲いくる狼へ手刀を放った。

瞬間―

腕輪の石が白く光り、咲夜の放った手刀から風が生まれ、狼たちを吹き飛ばす。


「…聞いていた以上ですね」


咲夜はココに来る途中のミカエルの言葉を思い出した。



吟声と吟声の近くに居る奴らは、こんなものなくても力を持ってる。
それは、吟声が力を与えている為。

…その力に太刀打ちするためには、コレが必要なんだ。

マリアは雷を操れる指輪と、生まれ持っての、人の力を倍増できる力が有る。

エルはサーベルに火を操れる石と、腕に水、そして生まれ持っての擬態。

祭歌は元、吟声の元に居たから石は持ってないけど、腐敗の力を得てる。


そんな風に、皆持ってる。

で、これは咲夜に。
風を操り、生み出せる腕輪。
使い方は自由だよ。

だけどあんまり無茶はしないで、
一気に大量の力を使おうとすれば石は砕けて壊れてしまう。
そうしたら、もうそれは使い物にならないから。




 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ