現実逃避×閉鎖区域

□生存競争×迷いの森
1ページ/3ページ


「はぁ…っ、…クソッ…」


真っ暗な闇に沈む森の中、木の枝から木の枝へと軽々と飛び移り走り抜ける3人の人影。
その内1つの影が舌打ちを漏らした。


「こんな…、…アルっ…絶対にお前、それ…持って帰るぞッ」


舌打ちを漏らした男が先頭を走る女、アルカナへと叫びかける。


「言われなくても…分ってる! …絶対に……ッ」


「っ! アル!!」


突然下から足が引っ張られ地面へと叩きつけられる体。


「っ…が……あぁ……」


肺が圧迫されて息が出来ない。
アルカナは胸を抑え直ぐに起き上がろうとした。が、足に絡みつく“水”がそれを許さない。

水は目にも見えぬ速さでアルカナの四肢の自由を奪うと、地面にその体を縫い付ける。


「っ、の…クソッ」


どれだけ暴れてもビクともしない。


「まったく、手間かけさせんなよ」


暗闇から水を纏い現れた青年は、ため息を付き地面に縫い付けられるアルカナを睨みつける。


「す…いむ…ッッ!」


青年…水夢の顔を見た途端にアルカナの表情が殺気に彩られる。


「…返せ。翡翠晶」


水夢が合図すると彼の周りを纏うように浮かんでいた水が、槍の様に尖りアルカナの首へと突き立てられる。


「返せよ。今返すんなら、殺したりしない」


「…返さない。絶対に、絶対に死んでもお前らに返すものか!!」


「だったら死ねば良「アル!!」っ!」


頭上からふってきた男が振り下ろす刀を後ろに飛び退いて避ける。

男は敢えてそこで距離を詰めるようなことはせず、アルカナの自由を奪う水を切る為、刀を水に突き刺す。


「水は切れねぇよ?」


「だから焼くんだよ」


男が刀を握り絞めると同時に、刀の刀身が赤く染まり炎が纏い、アルカナに絡みつく水を全て蒸発させた。

アルカナは素早く起き上がり、腰に付けたライフルに手をかけ、水夢を睨み付ける。


「…めんどくせぇことしてくれてんじゃねぇよ…」


「だったら早く生き返らせれば良いんだよ」


水夢の背後を取るように、水夢へと銃口を向けた男が現れる。


「……3人か……」


水夢は視線だけを動かして敵の数を再確認し、素手ではキツイと判断したようで、長ドスを腰から抜く。


「アル…、お前は良い…」


「…けど…」


「良い。何を最優先にするか、考えろ」


「……分った」


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ