現実逃避×閉鎖区域

□不協和音×見知らぬ場所
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顔の見えない男の人が泣いている…
…顔は見えないけど頬が濡れてるし泣いてるんだと思う…。



ごめんね



男の人は掠れる声でつぶやいた。



君を巻き込んでごめんね



意識が浮上する。







「誰…だったのでしょう?
……にしても、…ここ、どこ?」


目を覚まして最初に視界に入ったのは、寂れた天井。
ところどころ出っ張った管には赤く錆が現れ、毒々しく重い雰囲気を作り出している。


「起きたか」


無音の世界を引き裂いたのは、全く知らない男。


「…誰です?」


警戒心を剥き出し男を睨みつける。



「そう睨むなよ、おっかねぇなぁ…」


「わたくしはあなたが誰なのか、と聞いたのですが」


「分ってるって、俺は黒金。
あんたの敵じゃねぇけど…味方でもないな…」


意味の分からない言葉。

分ったのは名前だけではないか…。


「…何故、仲間ではないと?」


「あんたさ銀髪で赤目の奴、殺したいんだろ? そこだよ」


…どうしよう、こいつはちゃんと人語を使っているのか?
意味が分からない…、何がそこなんだ?


訝しげな表情で黙っていると黒金は話を進め出す。


「俺らも銀髪、赤目の奴を殺したい。つまり俺らとあんたの敵は一緒って事だ」」



「…なるほど。…ですが少々違います。わたくしの目的は確かにその男を殺す事。
ですが記憶が曖昧で本当にその男がわたくしの思っている相手なのか分らない。
故に、わたくしが殺したいのはその男、そして全ての銀髪、赤目の人間です」


「……え…っと……」


少し困ったように視線を足元へ向けたあと、黒金は再度咲夜へと視線を向けた。


「ってことは、エルの事も殺すのかよ?」


「エル…?」


誰の事?
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