現実逃避×閉鎖区域

□鬼哭啾啾×記憶
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ごめんなさい ごめんなさい

最初に人を殺した時、私はその瞬間を見る事が出来なかった。
目を伏せ許しを請おうと何度もそう心の中で言い続けた。



「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」

5人目を殺した時、人を殺すことに抵抗がなくなってきた事に気が付いた。
目を開けても大丈夫。けど今度は断末魔が耳について離れなくなった。
だから断末魔よりも大きな声で、何度も何度も喉が痛くなるほど叫んだ。



ごめんなさい…
12人目を殺した時、人を殺すことに抵抗がなくなっていた事に気が付いた。
目を開けても大丈夫。叫ばなくても大丈夫。
それでも心の中では謝り続けた。




20人を越した時、不意に気が付いた、何も感じていないことに…。
目を開けても大丈夫。断末魔も大丈夫。
謝ることもやめていた。





何人殺したか分らなくなった時、私は気が付かなかった。
死に直面して恐怖に引き攣る顔に、最後の最後まで引き出される叫び声に…
この上なく、心が癒されているのが……。

もう、狂いきっているということに、気が付かなかった。


アナタに言われるまでは…




 
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