砂時計

□進む←4人目←侵入←狂風
1ページ/4ページ

長い螺旋階段を下りると其処は、四角い四畳半程度の広さの個室が並ぶ暗く寒い場所だった。

鉄格子の中には恐ろしい形相の者たちがこちらを物珍しげに、恨めしそうに、憎そうに睨み付け、
口ぐちに同じことばかり叫んでくる。

「出しやがれ!」
「何で外にいんだよ!」
「無視してんじゃねーぞガキ!」
「コッチこいや! 殺してやらぁ!」


男の声、中には女の声もする。
叫び号、罵声、怒声、鉄格子をガタガタと強く揺さぶる音。
それらが混ざり合って酷くうるさい。


けど、そんなことは気にしてられない。

『エント…彼…何処にいるかわかる?』


《さすがに今回はのぉ…。名前も顔も分らぬのではなんとも…》


『…そっか。なら今回は自分で探すしかないね』


ユックリと牢屋の中を見てまわる。
彼が居る場所を…探して回る。


「オイ、ガキなんでそっちにいんだよ。どうやって出やがった?」


1人の囚人が罵声ではなく、静かな声色で声をかけてきた。
ザクロは恐る恐るといった感じで声がした方へ眼を向ける。


「…僕は上から来ました。…ある人を探しています。囚人ナンバー106…知りませんか?」


「出してくれたら応えてやるよ」


《…信じない方が良いよ、ザクロ》


男の子の声がする。


『わかってる。けど…』


「どうした? 出してくれんのかよ?」


「出したら教えてくれるんだね」

《ザクロ…、僕たちはココじゃ満足に力を出せないよ…
ここ自然が全然ないから…》


『分ってる』


「あぁ。出してくれたらな」


疑心を抱きながらもザクロは男を閉じ込めている鉄格子を見据え、小声で唱えた。

「風よ。彼らの道を妨げる物を排除して…フーゲル」


鉄格子の檻に斜めに線が入りそこから鉄格子がすべり地面に派手な音を立てて落とされた。




  
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ