BL

□一番になりたいと、
1ページ/1ページ



―あいつはほっとくと
休憩なしにボールとばかり
向き合っている



円堂とは長い付き合いだ


昔の話はまた今度でも、


そんな俺は何時からか
あいつに対して
淡い想いを抱いている


円堂は昔から皆の人気者で
輪の中心に居た


俺はその輪に入れなくて
見ているのだけど
必ず円堂が
手を引いてくれた



俺より大きい手が
温かく優しい手が
大好きだった


今ではもう、
堂々とは繋げないけど




―あいつはほっとくと
風みたいに駆け抜けて
空に溶けてしまいそうだ



風丸とは長い付き合いだ


昔の話は今日はなし


そんな俺は何時からか
あいつに対して
大好きだと思ってる


風丸は昔、
人付き合いが苦手で
輪の外に居た


俺は輪の中心で
彼を探しては
必ず手を引いた



俺より小さい手が
少し冷たく華奢な手が
大好きだった


今でも、ふと
繋ぎたいと思う時がある


昔からサッカー一筋で
昔から走り一筋で


“俺”がどうこういって
趣味を変えられはしない


ただ、
気を引きたいのは確かで



夕方の河川敷、
橙の光が水に反射して
キラキラと輝いていた


だけどそれ以上に
眩い光を放つのは円堂だ


部員が居ようが
居なかろうが

活動しようが
しなかろうが

あいつはボールを蹴り続ける


何時か皆もやる気を
出してくれるはずだと


円堂が努力してるのに
俺は馬鹿だと思う


―ボールに嫉妬するなんて


あいつには酷な話だが
サッカーが無くなれば
俺にもっと構ってくれるか


そんな不純な思考を
巡らせる俺は
末期なんだろう


願っても俺がサッカーボールに
なることは不可能だ


「円堂!!」


風丸が俺の方へ
走ってきていた


相変わらずの綺麗なホームに
釘付けだった


「風丸、今日は部活
早く終わったんだな」


「ああ、それでお前を
見つけたって訳」


「そっか!」


風丸が走る姿を見る度に
感じる喪失感とか
知らない誰かも綺麗だと
感じてるんだろうなという
推測だとかで
俺は苦しくなる


いっそ俺が目の届くサッカーに
縛り付けてしまえたら…


なんて、
風丸も困るだろうに




一番になりたいと
思ってしまった




どうしたらその瞳に
もっと映り込めるだろう


どうしたらもっと俺を
意識してくれるだろう


そう考えれば考える程
ワケが解らなくなる


「ああ、もうやめだ!!」


円堂が突然、叫んだ


「俺には難しすぎるんだ」


そう言ってから
彼は改めて俺を見た


「何が難しいんだ?」


「俺は深く考えるより
行動する方が
向いてるんだよな!」


そう言ってキスした


風丸は目を見開いて
固まったままだ


「風丸が好き、
好きなんだ!!」


KFCの皆の声も
走り回る子供の声も
何も聞こえない


俺の声だけが響いた


「円堂、」


困ったように風丸は笑う


「俺も、円堂が好きだ」


円堂を真似るように
俺も口付けた


目をそっと上げれば
俺の為だけの笑顔



風丸は頬を夕日みたいに
赤く染め上げていた



―キミの中ではどうかな

俺の中ではキミが
一番大切なんだよ





――――――――
企画「X02」に提出

幼なじみ組が可愛くて
仕方ない今日この頃です

素敵な企画、
ありがとうございました!!

*


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ