V

□Darling
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雑誌をパラパラと捲りながら、流行りの曲を口ずさむ。


ソファーに座ってのんびり過ごすいつもの休日の光景。



「随分と機嫌が良さそうだな」



頭の上から降って来た声の主も、どこか機嫌が良さそうな様子。


ポンポンと頭を撫でる彼の手が心地良い。



「機嫌も良くなるわよ。だって隣にネジが居るのよ?」

「…またお前はそういうことをさらっと言う」

「本当のことだもん」



ネジの方へ顔を上げて悪戯げに笑うテンテンの額に軽くデコピンをお見舞いし、彼女の横へ腰掛ける。



「急に暖かくなって来たね」

「すっかり春だな。昨日任務帰りに通ったんだが、川沿いの桜並木が綺麗だった」

「本当?お花見行きたいなあ、お団子いっぱい買ってさ」

「花より団子ってやつだな」

「もう。失礼ね」



ムスッとするテンテンの頭をくしゃくしゃになるまで撫でて、ネジは笑う。



「ネジこそ随分機嫌が良さそうじゃない」

「隣にテンテンが居るんだから、機嫌も良くなるさ」



自分の言葉を鸚鵡返しされただけなのに、口下手な彼に面と向かって言われると恥ずかしくなってしまう。



「テンテン、耳まで赤い」

「ネジが普段あんまりこういうこと言わないから、免疫が無いの!」



照れてそっぽを向いてしまったテンテンの頬に、ネジはやんわりキスをした。



「こっち向け」

「…顔真っ赤なのが自分でも分かるからイヤ!」

「どんなテンテンも可愛いよ」



結局、強引に彼の方へ顔を向けられる。

コツンと額を合わせて、ネジはクスリと笑った。



「花見、行くか?」

「…今はもうちょっとネジとこうしていたいかな」

「花より俺ってか」

「フフッ、そういうことね」



どちらともなく交わる唇。


部屋の窓から差し込む優しい春の陽射しが、二人を包んで。






end.


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