日向さんち。
□ありがとうの日
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「ほら月冴、ケーキ出来たよ!」
じゃーん、と言わんばかりにテンテンが冷蔵庫の中から取り出したのは、彼女が一生懸命手作りしたホールケーキ。
今日で月冴は一歳。初めての誕生日を精一杯祝おうとスポンジから焼いて作ったのだった。
そんな母親の気持ちを知ってか知らずか、ネジに抱かれている月冴はそのケーキに手を伸ばしながらニコニコしている。
「早く食べたいと言っているようだな」
「月冴のために作ったんだから食べてもらわなきゃね」
「虫歯になったら困るからあんまりあげすぎるなよ」
子ども用の椅子に月冴を座らせ、三人でケーキを囲む。
少しだけ月冴の分を皿に取り分けてやるとまだ使えないフォークを握るだけ握って、反対の手で掴み食いする姿にネジとテンテンは顔を見合わせて笑う。
「結局いつもフォークは持ってるだけなのよね」
「そのうち使えるようになるさ」
そう言いながらネジは月冴の口の周りに付いている生クリームを拭ってやる。
そして、美味しいー?と黙々とケーキを食べる月冴に話しかけるテンテンを見て、思わず笑みが溢れた。
「何?今、私の顔見て笑ったでしょ」
「いや。テンテンもすっかり母親になったと思っただけだ」
元々いつも笑顔の絶えないテンテン。
月冴が生まれてからたくさん大変なこともあっただろうに、そんなテンテンの笑顔は今でも何一つ変わらない。
彼女は本当に強い。
結婚して、子どもが出来て、ネジはますますそう思うようになった。
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