日向さんち。
□おさんぽ
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「ぱー」
「どうした、月冴」
里の中心街で夕食の買い物をする親子二人。
最近漸く任務に復帰したテンテンは今日は帰りが遅くなるということで、散歩がてら非番のネジは月冴を抱いて外出していた。
「ぱーぱーぱー」
「残念。それだと一つ多いな」
最近の月冴のお気に入りは『ぱ』の発音。
ネジの顔を見て『ぱ』と言うところを見ると、どうやら無意味に言っているわけではないらしい。
「まんま〜」
「少しだけ我慢してくれ。もう買い物も終わるから」
「やー!」
言葉をたくさん覚え出すとコミュニケーションがとれて面白い反面、嫌なことは嫌だと言うようになってきた。
仕方ないと思いながらネジは残りの買い物を一旦諦め、近くの公園へと向かった。
ベンチに並んで座り、月冴の物がたくさん入った鞄の中から乳児用のビスケットを取り出し小さく割ってから月冴に渡す。
「少しずつな」
「あー」
分かっているのかいないのか、月冴は渡されたビスケットを嬉しそうに次々口の中へ運ぶ。
月冴の口からポロポロと溢れる欠片をネジは綺麗にしながら、自分もビスケットの破片を口に入れる。
「あ!わんわん!」
「わんわん?」
「ぱー、わんわん!わんわん!」
月冴が興奮し気味に指差す方向を見てみると、そこに居たのは公園の前を通り掛かったであろうキバと赤丸。
向こうもこちらに気付いたようで、二人の方へ歩いてくる。
「よっ!今日は家族サービスデーか?」
「テンテンが任務でな。散歩がてらここへ寄ったんだ」
「わんわんー!」
「おっ、わんわんが分かるのか月冴」
分かるよ!と言わんばかりに手を伸ばす月冴に赤丸は擦り寄った。
年老いた赤丸はもうキバを上に乗せることは出来ないが、こうしてキバと近場で散歩をしているところは度々見かける。
ついこの間まで子犬だと思っていたのにと思いながら、息子と赤丸が遊んでいるところをネジは微笑んで見つめていた。
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