日向さんち。

□初めて記念日
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「いないいないばあ〜」



顔を覆っていた掌を離すと、テンテンをじっと見ていた月冴はきゃっきゃと笑い始めた。



「今日もご機嫌さんね〜、朝からずっとにこにこしてる!」


「赤ん坊は皆夜泣きがあるものだと思っていたが月冴は全然泣かないな」


「夜泣きで悩まされたことなんて一日も無いもの。ほんと、月冴はとっても良い子♪」



そう言ってベッドに寝転がっておもちゃで遊んでいる月冴の頭を撫でれば、再び声を上げて笑っている。



「…大分重くなったな」



ネジがベッドから月冴を抱き上げた。


首もしっかり座っており、喃語を話し始めた口の中にはちょこっと生えた歯も見える。

半年で随分大きくなったと、腕の中の月冴の成長をしみじみ噛み締めた。



「あーあー、うー」


「ふふっ、何て言ってるのかしら?」


「うー」


「コラ。髪を引っ張るな」


「きゃははっ」



ネジの長い髪の毛を楽しそうに引っ張る息子を本気で怒る気にもなれない。

それくらいやはり自分の子は可愛い。ネジですら、口にこそ出さないが月冴のことを天使じゃないんだろうかと毎日思うほど。



「それにしても、見事に俺達を2で割った感じだな。誰が見ても俺達の子だと分かるんじゃないか?」


「えー。でも目がまんまネジだから顔の印象はネジ似よ」


「髪色はテンテンじゃないか。少し癖っ毛のところもそっくりだな」


「どうせなら髪質もネジに似てたらつやつやだったのにねー」



少しはねた栗色の毛先をテンテンが優しく撫でる。

ネジと同じ薄紫の瞳はじっと母親の顔を見つめていた。


もしも白眼を使えるようになったら、この瞳に何を映すのだろう。

何を感じて、何を大切にして生きていくのだろう。



「…早く大きくなったところを見たい気もするけど、やっぱり可愛い盛りの今を楽しまなくちゃね!」


「とか言って大きくなってもずっと甘やかしていたりしてな」


「もー、私だけずっと親馬鹿みたいな言い方ね」


「いいや、俺もそうなりそうだと思ってな」



二人共思っていることは同じ。


この子が何歳になっても、どんなに大きくなっても、ずっと愛しいに決まっている。

この胸にある温かい気持ちがきっと幸せなんだと感じながら、ネジとテンテンは顔を合わせて微笑んだ。



「まーま」



ふと、ネジの腕の中から可愛い声。

しかし発せられた言葉は今まで一度も聞いたことのない単語で。



「ちょ、ちょっと、今ママって言った?!」


「俺にもそう聞こえた。月冴、もう一回言ってみろ」


「まあま!」



月冴はにこにこして何度もまま、ままと繰り返した。



「うそ、ママって言ってる!」



初めて聞いた言葉。
そして初めて呼ばれた「ママ」。

嬉しさを隠し切れないテンテンは月冴を抱くネジの背中に抱き着いた。

嬉しそうなテンテンに、すくすく育つ月冴にネジも喜びを感じて口元を緩める。



「…ママ、か」



パパと呼ばれる日が早く来ないものかと、心の中での楽しみになったことはネジだけの秘密。




初めて記念日

(これからどんどん増えていくね)





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ただただネジテンには幸せでいて欲しいという気持ちが全面に出た結果(笑)




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