日向さんち。
□新生活
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「なーんかものすごい久しぶりに帰ってきたような気がする!」
母子共に健康、何の異常も無いということで、出産から五日後にテンテンと月冴は退院することができた。
テンテンはリビングに予め用意していたベビーベッドへ抱いていた月冴を寝かせ、ソファーに深く腰掛けた。
「さすがネジ、私が居なくてもしっかり掃除しといてくれたのね」
「居ても居なくても元々掃除していたのは俺だ」
「もー!悪かったわね散らかし役で!」
口先では怒っているものの、表情が何処か楽しそうなテンテンを見てネジの顔も綻ぶ。
沸かしていたお湯をカップに注ぎ、テンテンの分のココアと自分のコーヒーを持ってネジは隣に腰掛けた。
「なんか不思議じゃない?前にこの家に居た時はまだ月冴はお腹の中だったって考えたらさ」
カップに口をつけながらテンテンが言う。
確かに今まではこの家に自分と彼女の二人で生活していたが、今日から三人になるのだ。
それは少し慣れないような、嬉しいような、擽ったいような感覚で。
「今はまだいいが、月冴が歩き出したら床に暗器を置いたままにするなよ」
「とか言いながら置きっ放しにしててもネジが片付けてくれるんでしょ」
「お前な…」
昔から変わらない彼女の笑顔を見ると、どうしてもつられて頬が緩くなることに最近気が付いた。
この笑顔に、ずっと惚れているんだと。
「さて、新しい生活のスタートってことだな」
「そうね。これからも変わらずよろしくね」
もちろん、と返事をする代わりに少し久しぶりのキスをして。
いつもと変わらない光景の中で、未来が大きく動く音がした。
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初めてのマイホーム。
ちなみにちょっと広めのアパート設定です(笑)