日向さんち。
□プレゼント
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「ネジー、あの棚から鍋取ってほしいな」
「あの黒いやつか?」
「そうそう」
ひょい、とその鍋を手に取ったネジ。
ありがとうと言い、テンテンがネジから鍋を受け取ろうとすると、頭に彼の手が乗せられた。
「夕食なら俺が作るから、お前はもう座ってろ」
「もー、ただでさえ何もさせてくれないんだから、ご飯くらい作らせてよ」
むっとするテンテンを見て、ネジは彼女のお腹に手をあてた。
膨らんだテンテンのお腹。
二人の子供がここにいることが、目に見えてわかる。
「何かあったら困るから」
「私とネジの子なのよ?そんな柔なはずないじゃない」
ねえ?とお腹の子に向かって話しかけるテンテンの顔は、もう立派な母親の顔で。
そんな愛する妻の姿を見て、ネジは自然に口元を緩めた。
「なら、今日は俺が作る」
「どうして?」
「たまにはいいだろ」
「…そうね、たまにはいっか♪」
エプロンを外して、台所をネジに任せたテンテンはダイニングの椅子に座った。
しばらく器用に調理する彼の後ろ姿を見ていたテンテンだったが、ふと視界に入ったカレンダーを見つめる。
そのカレンダーは今朝彼女がめくったばかりで、大きく七月と書かれている。
「ねえ、ネジ」
「なんだ」
「明日も明後日も一日任務だって言ってたわよね?」
「ああ」
今日は7月1日。
明後日の7月3日はネジの誕生日だ。
誕生日プレゼントに何か買おうと思っても、妊婦であるテンテンに対してあまりにも過保護な彼は、彼女一人での外出をまず許さないだろう。
しかし物をあげるのが無理ならば、とたった今考え付いた誕生日プレゼントに、テンテンは小さく笑みを浮かべた。
「ネジの誕生日プレゼントにさ、すごいものあげるわ」
「すごいもの?」
「ネジがこの子の名前を決めてあげて」
思わず調理をしていた手を止めて、ネジが振り返る。
「…俺が決めてもいいのか」
「ネジに決めてほしいの」
ひどく優しい顔をしたテンテンを見て、ネジは苦笑した。
「責任重大だな」
「変な名前つけたりしないでよー?」
「当たり前だ」
予定日まで、あと四ヶ月。
性別は聞かないようにしようと二人で話し合い、お互いにまだ知らない。
「男でも女でもいいような名前を考えないとな」
「頑張って考えてね、パパ」
「…俺にパパは無いだろう」
「いいじゃない。ネジパパー♪」
テンテンの明るい笑い声が響く。
子供が生まれるまでに、もっと明るい家庭を作ろう。
そう思って、ネジは再び台所に立ち調理を再開した。
プレゼント
(君が生まれて来たら)
(ますます幸せになると信じて疑わない)
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何よりテンテンと我が子が大切なネジパパ。