短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEB
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たごまるって何だ?まったく意味が推測出来ない。しかもひらがな。バンド名ってカタカナとか英字って勝手に思い込みがあった。
「はい、たごまるですね。お名前は?」
「霧生です。」
「……ちょっとお名前が見当たりませんね。申し訳ありませんが通常料金でお願いします。ドリンク代込みで800円になります。」
あ、そんなもんなんだ。お金かかるって聞いてないけど。ライブハウスの仕組みが分からないなぁ。
「こちらドリンクチケットになります。どうぞ楽しんできてください。」
中に入ると薄暗さと煙草臭さと爆音が待っていた。
『ありがとー!!また来てねー!!』
『イエーッ!!』
ステージ上で照らされた人達が叫ぶとその前に数人で集まってる人達も叫ぶ。
盛り上がってるのはその集団だけで他の人たちは壁によりかかったりテーブルで飲んだり煙草吸ったり。あと、そんなに広い空間ではないけど、人が多いという印象が無い程度の人数だった。
ライブってテレビで見ると満員でみんながみんな飛んで跳ねて叫んで大盛り上がりだけど、実際こんなものなのかな。
キョロキョロしながら歩いているとドリンクとネオンで書かれた一角が目に入った。
次の演奏が始まる前にもらっといた方が良いかな。
「いらっしゃいませ、霧生くん。」
うわ、メニューってお酒ばっか。飲んだこと無いんだけど。
「無視ですか?」
「え?」
「こんばんは。」
そこにはいつもと少しだけ違った笑顔の笹雲さんがカウンターの内側にいた。
「……あ、こんばんは。」
「来てくれてありがとう。」
「あ、いえ。」
「入場料かかったでしょ?後で返すね。」
「いいよ、別に。」
「そうはいかないわ。お飲み物はいかが致しますか?」
接客ボイスというやつなのか声と口調がちょっと変わった。
あ、店員さんだったんだ。
「お酒、飲んだこと無いんだけど。」
「あら、そうなの。一応ソフトドリンクもあるけど、せっかく盛り上がる為の場所に来たんだから飲んでみれば?」
「……ソフトドリンクで。」
「はい、メニューはこちらになります。」
「ウーロン茶で。」
「炭酸はダメな人?」
「いや、平気だけど。」
「飲み物くらいハジけてみたら?」
「じゃあジンジャーエールで。」
「モスコミュールで良い?」
「何それ?」
「ジンジャーエールとウォッカのカクテル。」
「…………。」
「うそうそ!冗談よ!ジンジャーエールですね。かしこまりました。」
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