短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEA
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特に目を合わせることなく通り過ぎる。
昨日あんな会話をしたんだから奥の引き戸から入れば良かった。
「霧生くんおはよー!!」
「………お、はよぅ…。」
挨拶をされた。
満面の笑みで挨拶をされた。
元気な声で満面の笑みで挨拶をされた。
ビックリした。ほんとにビックリした。まさか挨拶されるとは。なんとか普通に挨拶を返せて良かった。
動揺を隠しつつ自分の席に向かう。何となく早足のような。おっかしいな歩きにくいと思ったら右手と右足が同時に出てる。
「瞳ちゃん霧生くんと仲良いのー?」
「話しとかするんだ?」
などと笹雲さんの近くにいた誰かが話してる。
あぁ、なんでこんな恥ずかしいんだ。
「おはよう。」
「…………はよぅ。」
声が出ませんでした。
僕の前の席の爽やか笑顔が眩しい山田くん。
「笹雲さんと仲良いの?」
「ぶっ!」
思わず吹き出してしまった。
なんでこんな動揺してるんだ僕は。
「い、いや別に。挨拶くらい山田くんもされるでしょ?」
「朝に目が会えばね。でもほとんどしない。」
「そう、なんだ。」
「羨ましいねぇ。」
今日の山田くんの笑顔は爽やかじゃない。イジワルだ。
「山田くん、彼女いるでしょ。」
「まぁね。」
そう言ってカラカラ笑う山田くんはやっぱり爽やかだった。
それにしても、この時間帯で良かった。もうちょっと遅い時間なら人が多くてもっと騒がれたかもしれない。なんせ男子の注目の的だから。目立つの嫌だ。




あっという間に放課後。
一日中考え事をしてると時間が早く感じると初めて知った。
もちろん内容は笹雲さん。僕はどうかしてしまったのだろうか。昨日の、顔と声と言葉が頭から離れない。
急に呼び出された委員会も短く感じた。どうせ一年生は話しを聞いているだけ。もともとやる気の無い僕はまるで集中出来ずに終わってしまった。
でも昨日ほど時間はかかっておらず、まだ夕日には遠い。
昨日の状況を思い出す。
ミュージックプレーヤーを忘れた為、教室に寄った。たまたま教室にいた笹雲さんに出会った。そして会話した。
なんで笹雲さんは教室にいたのだろうか。もしかしたら今日もいるのかもしれない。
わざと机の中にミュージックプレーヤー置いてきた。なんてことはしてない。一瞬よぎったが止めた。
置いていく意味も無いし。
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