短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDED
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やがて船は桟橋に着き、老人が顔を出した。
「ただいま。三十年経っても一目で君だと分かったよ。」
時を超えて男の子と女の子は再会を果たし、抱き合った。
「待たせてごめん。結婚しよう。」
……確かこんな感じだった。かなり大雑把だけど。長かったな。何せ映画館なんて数年振りだ。尻が痛くなってくる。
「…………。」
「…………。」
誰も何も言わないな。映画を見終わったら感想を言い合うのだと思ったけど、言わないですむならそれに越したことは無い。
それとも先頭に出た人から喋らなきゃいけないのかな。最後に出れば良かった。
とりあえず何か言ってみようかな。
「こう長いとお尻が…って、え?」
山田夫妻、撃沈。
「……ふぐ、良かった。また…会えて良かった……。」
「……ぐす、作り話しは…作り話しじゃなかったんだね……。」
ものすごい泣いてる。
びっくりするくらい泣いてる。
これでもかってくらい泣いてる。
「……信じ抜く強さが、あったよ。」
「……きっと辛かっただろうね。」
笹雲さんもそれを見てひいて、いや、驚いてる。
まぁ、まさか号泣するとは思わないよね。この二人どうすれば良いんだろう。
「と、とりあえず喫茶店でも入ろうか。」
ナイス、笹雲さん。





「良い映画だったねー!観て正解だったよー。」
「いやぁ、泣いちゃって申し訳ない。でもほんと良い映画だった。」
「…良かった。」
純子さん、また泣きそうだ。
そんなに良い映画だったのだろうか。やはり僕は物事に対して興味が薄い。話しの輪に入れないようだ。
「女の子に告白するシーン良かったよね。いかにも青春ぽくて。」
「あぁ、良かった。女の子がお礼を言おうとしても言えなかったとことか好きだなぁ。」
「付き合ってからも、新鮮な二人が良かった。」
やっぱり笹雲さんと山田くんで会話してる。たまに純子さんが入る感じ。
まぁ、こんなもんかな。
「霧生くん。霧生くんはどのシーンが良かった?」
「……。えっと…。」
声をかけられることを考えて無かった。
「夕日を背負った船が綺麗だった…。」
「うん、綺麗だったよね!私はあのシーンでどんどん期待が膨らんで大変だったよ。」
「俺は既に泣きそうだった。」
ちゃんと僕に話せるようにしてくれているようだ。さらにそこから会話を広げてくれる。
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