短編

□EVERYBODY HAS THE DEVIL ON INSIDEC
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別れたあと、昨日程の疲労感は無かった。友達との会話は疲れないものなのか。
そんな、普通の人なら分かることを考えながら床についた。





「デートをしましょう。」
その一言から始まった。
言ったのは当然、笹雲さん。僕にはそんな発想は無い。仮にあったとしても声をかける勇気は無い。
前にライブを観に行ってから二週間くらい経った。その間僕は教室の後ろの方の引戸を使ったり、休み時間は寝ていたりと自然に見える範囲で笹雲さんを避けていた。
僕は味方を必要としていないけど、敵を作りたい訳じゃない。相手は男子の熱視線の先にいる。その間に入ってしまったら焼き殺されかねない。
しかし、同じ教室にいる以上目が合うことはあるし、その時の笹雲さんの気分次第では話しかけられてしまう。でも優等生の人当たりの良い笹雲さんがそうするのは当たり前のことらしいので、今のところ敵はいないようだ。
さて、デートと言われても理由がまるで分からない。デートって男女で出掛ければデートなんだろうか。そうすると友達を誘った理由は分かるけど、僕と一緒に行動して果たして楽しいのか。
あ、そもそも僕に話しかけたのか。思い上がってはいけない。周りを見よう。
笹雲さんは僕の机に両手をついている。つまり前の山田くんということは無い。僕は窓際の席だから、後は後ろの席…。
「むぅ…。」
僕は一番後ろの席じゃないか。というより机に手をついてる時点で僕しかいない。
「は?」
一応、理解出来ていない旨を伝えてみる。
「デートをしましょう。」
もう一度言われた。
「……僕?」
「うん。」
真っ直ぐ僕の目を見て言う。
机に手をついてることで僕の退路は完全に絶たれていたらしい。最初から計算されていたようだ。
「……何故?」
目を逸らしながら言う。
「貴方の能力の中で一番低いのが社交性だと思うの。だから私とデートをして少しでも人と接することの大切さを伝えられたらと思って。」
あぁ、なるほど。つまり生徒会役員として生徒の為になることをしたいと。
「もちろん二人っきりじゃないわ。山田くんとその彼女にも来てもらってダブルデートよ。それなら相手が私でも良いでしょ。」
笹雲さんを相手にしたい人が何人いると思っているんだ。いや、僕も知らないけど。
「よろしく!」
山田くんが爽やか笑顔で言ってきた。
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